染花人形を考案、世界へ…那覇出身の石田さん 仏「ブリリアント芸術家」に


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首里城火災を知り、悲しみをイメージした作品「下り花」

 【京都】京都で染花(そめはな)人形作家として、那覇市出身の石田加代子さん(61)が活躍している。国内外の展覧会に作品を出展し、フランスのルーブル美術館に染花人形のポストカードも寄贈した。「世界中の人々の心に感動を与えられるような作品を作り続けたい」と抱負を語る。

 石田さんは現在、京都市嵯峨に住み、教室「アトリエSOA」を開いている。染花は、白い布を花びら型にカットして一枚一枚丁寧に染め、全て手作業で作るオリジナルのアートフラワーだ。

 石田さんが染花人形を思い付いたのは、京都市で看護師として働いていた時のこと。病院のロビーに飾られていたフランス人形を眺めていたお年寄りたちが、人形のドレスの色について楽しそうに語り合う様子を見て「人形を通して触れ合うことで認知症予防にも役立つのではないか」と思ったのがきっかけだった。

 ドレスにふさわしい花の素材を模索し、最初はティッシュペーパーで作ることから始めた。その後は自分なりに工夫した技法を取り入れて花作りに励み、染花人形にたどり着いた。

 2019年には、首里城火災に衝撃を受けて作った染花人形「下り花」を清水寺で開かれた文化芸術展「藝展」に出展した。作品を石田さんのホームページで見た美術関係者から、ルーブル美術館地下の広場で開催されるサロン・アート・ショッピングへの出展依頼があり、その後は雑誌や国内外への出展依頼が増えた。

染花人形作家として活躍する石田加代子さん

 2020年にはルーブル美術館から「ユニオン・デ・ザール選考アルチスト・ブリリアント芸術家」の称号を授与され、オルセー美術館からオルセー世界芸術遺産作家にも認定された。

 数々の賞も受賞している。国際芸術文化栄誉賞を受賞した作品「桜」は、専門雑誌で評論家から「あえて顔を描かないことで、人形から発せられる固定観念を消し去り、世界中誰が見ても自由な捉え方ができる国際性を作品に与えている」と評価された。

 石田さんは現在、那覇高校時代の先輩の黒木眞知子さん=京都市=と共に医療現場で週2回、働いている。「コロナ禍の中、少しでも力になりたい」との思いから、患者を支援しながら、作品作りにも励む。

 石田さんは独自に生み出した染花人形について「自分の作品から、沖縄の風を感じていただけたらうれしい」と話す。「いろいろな方とのご縁があったからこそ今を大事に、感謝の気持ちを忘れないようにしたい」と語った。

(磯部美代子通信員)