「仕方ない」「我慢の限界」…経済界の苦悩続く 沖縄「まん延防止措置」延長に


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 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、県内の10市5町に出されている「まん延防止等重点措置」の期限が、5月末まで延長された。県として飲食店や飲食を伴う遊興施設に求めている時短営業要請も延長となる見通しで、経済活動の停滞は長引く。経済界からは、延長に一定の理解を示す一方で、困窮する現場に迅速で強力な支援を求める声が上がった。


【飲食・遊興】延長理解も現場落胆
 

客足もまばらな飲食店街=7日午後7時すぎ、那覇市松山

 営業時間の短縮が要請されている飲食店や飲食を伴う遊興施設からは、まん延防止等重点措置の期間延長に落胆の声が上がった。

 那覇市など本島の20市町村では、4月1日から2カ月間にわたって時短要請が続くことになる。県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は「飲食業界は、11日までで解除されると思って頑張ってきた。解除してほしかった」と語った。

 解除に向けて、予約の受け付けや仕入れなどの準備を始めていた店もあったという。午後8時以降も営業している一部の店舗に客が集まっているとして、「不公平感がある。延長で気持ちが切れて、時短営業に協力しない店が出てこないか心配だ」と話した。

 スナックやバーなどが加盟する県社交飲食業生活衛生同業組合の下地秀光理事長は「仕方ない。一気に封じ込める必要がある」と延長には理解を示す。一方で、固定費や従業員の給料の支払いで困窮している店舗も多いとして、「協力金の申請を、分割して受け付けるなどの対応も検討してほしい。いつ支給されるのか分からず、みんなやきもきしている」と話した。

 感染防止対策として、飲食店でのカラオケ設備の利用自粛などが求められている。県カラオケスタジオ協会の担当者は「売り上げの落ち込みは続いている」と吐露する。「カラオケボックスではクラスター(感染者集団)は出ていない。換気が徹底されている点をPRしたい」と話した。


【観光】繁忙期も先見通せず
 

 まん延防止等重点措置の延長を受けて、昨年から繁忙期の需要を取り込めずにいる観光業界には、夏に向けた対策強化を求める声がある。緊急事態宣言地域などとの往来自粛がさらに続くことから追加減便を検討する航空会社もあり、日本トランスオーシャン航空は5月の運航計画から4割程度の減便になる見通し。

 県ホテル協会の坂本公敏副会長は「(飲食店舗で)時短営業を守っているところが多いが、守っていないところはもう少し強い措置に踏み込まないと感染は収まらない。夏場に向けて取り組んでほしい」と話した。

 那覇市内のホテルは、例年だとゴールデンウイークの終了後に、7~8月の予約が40~50%程度まで埋まってくる。だが、現時点で7月の予約は10%程度しかないという。

 県内の観光施設事業者でつくる美ら島観光施設協会の大城宗直理事は「感染症の観点からすると必要な施策かもしれないが、それによって影響を受ける事業者がいる。(重点処置)延長後の観光が全く見通せないことが問題だ」と強調する。「新型コロナの感染拡大から1年がたち、観光インフラにどのような影響が出ているのか実態を調査しながら、企業が生き残れる支援をしてほしい」と話し、観光産業を守るための補償の必要性を訴えた。


【卸売・流通】飲食時短で取扱量減
 

 卸売業や流通業は、飲食店の時短営業により、酒類や生鮮品などの取扱量減に直面している。農産物の県外出荷にも航空減便が影響する。重点措置の期限延長を受け、雇用の維持などに苦しむ業界への支援を求める声が強まっている。

 青果卸売りの兼正青果(那覇市)は、4月の売り上げが前月比2割減となった。古波倉正紀社長は「我慢の限界だ。2割減は大きく響く」と頭を抱える。飲食店に対する時短協力金のような支援策は卸業にはなく「コストカットで人員縮減も検討しないといけない」とため息をついた。

 組合員約100人が加入する県卸売酒販組合の喜屋武善範会長は「飲食店向けの業者は開店休業状態だ」と悲鳴を上げる。飲食店での酒類提供は午後7時で終了するため、需要は大きく減った。重点措置の延長に一定の理解を示すが、業界は経営が厳しい小規模業者が多い。

 喜屋武会長は「コロナの影響はいつ終わるかも分からず、融資返済の計画が立てられない事業者もいる」と、強力な支援の必要性を訴えた。

 農水産物の県外出荷は、旅客便の減便の影響で制約を受けている。昨年に比べると突然の減便は減っているが、機材の小型化が常態化し、輸送力は下がったままだ。JAおきなわの担当者は「大阪、福岡などへの航空便は窮屈さもあり、厳しい状況は続いている」と説明した。

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