【深掘り】自然と基地 矛盾を楽観視 知事、米軍区域逸脱「想定なし」<沖縄・奄美 世界遺産>


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記者団の質問に答える玉城デニー知事=11日午前、県庁

 沖縄・奄美の自然が世界遺産に登録される見通しとなった。米軍基地が隣接する状況での登録について県関係者からも負担の固定化を懸念する声が上がる一方、負担軽減に生かすべきとの期待感もある。軍事基地と自然遺産という矛盾にどう向き合うかが重要となる中、玉城デニー知事は11日の記者会見で楽観的な見方を示した。

 玉城知事は基地との関連について「沖縄防衛局と連携し情報を収集しながら、自然環境の保全に向けた取り組みをしていきたい」と話しながらも、「北部訓練場からはみ出た訓練が行われることは想定されない」と強調した。

 しかし、北部訓練場の土地半分は2016年に返還された一方、上空に設定された制限空域は返還前のまま維持され、民間機の飛行が制限されている。県内各地の訓練区域外で米軍が低空飛行を繰り返すように、米軍の訓練を縛る規制はなく、北部訓練場をはみ出た運用がないという保障はない。

 実際、米軍ヘリが17年に東村高江の民間地に不時着・炎上し、19年には返還跡地内に誤って着陸した。米軍は後日「現在も使用できる発着場と誤認した」と説明している。

 名護市辺野古の新基地建設による世界遺産登録への影響を巡っては県が態度をあいまいにしてきた経緯がある。17年4月、当時の翁長雄志知事は国際自然保護連合(IUCN)に書簡を送り、世界遺産登録を求めつつ「近隣の辺野古が新基地建設の埋め立て地域とされており由々しき問題」と訴えた。その後、登録の機会を逃したくない県は世界遺産と辺野古埋め立ては「別」と主張し、自然保護団体や新基地に反対する市民らから批判が上がった。

 翁長前知事の書簡に関連し、辺野古工事による世界遺産登録への影響を問われた玉城知事は「書簡の内容を詳しく知らない。内容を見てどんなメッセージを発することができるか検討したい」と述べるにとどめた。
 (明真南斗、当銘千絵)