「伊佐浜土地闘争」伝える 宜野湾市教委がビジュアル版発行


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
写真やグラフィックなどを多く用いたビジュアル版「伊佐浜の土地闘争」

 【宜野湾】宜野湾市教育委員会は3月、ビジュアル版「伊佐浜の土地闘争」を発行した。現在の宜野湾市伊佐や北谷町北前などにまたがる米軍キャンプ瑞慶覧周辺にあった伊佐浜。米軍が海から土砂を田んぼに流し込み、住民が「土地が殺された」などと苦悩する様子を、写真やグラフィックなどを使い解説している。

 伊佐浜は、琉球王国時代末期から明治期に首里などの士族が移り住んでできた屋取(ヤードゥイ)集落だった。現在はバス停などの表記が残る。豊かな水田が広がる「北谷ターブックヮ(田んぼ)」にあり、住民は米やキビ、芋などを育てて生活していた。

 1945年の沖縄戦で伊佐浜を追われた住民は、47年に故郷へ戻り生活の再建に励んだ。しかし米軍は54年、農作物の撤去や土地の明け渡しを求めた。住民は陳情や折衝を重ねて葛藤し、活動は米軍に抵抗する土地闘争に発展していく。

 ビジュアル版では、米軍の強制土地接収が起こる55年7月18~19日の様子を、証言や当時の新聞などを掲載し細かく紹介している。また土地を奪われた住民が、インヌミヤードゥイ(現沖縄市高原にあった収容所)やブラジルに移り住んだことも報告している。

 市立博物館の平敷兼哉館長は「当時の緊張感や危機感を出したかった」と語る。中学生以上の読者を対象にし「地元にこういう歴史があったことを理解し、将来のまちづくりを考えるきっかけにもしてほしい」と願いを込めた。

 ビジュアル版はA4版オールカラー52ページ、税込800円。800部発行し、うち300部は市内の小中高校や大学、自治会などへ寄贈した。2019年3月に発行した市史「伊佐浜の土地闘争(資料編)」から抜粋した内容となっている。問い合わせは同博物館(電話)098(870)9317。