米若者から圧倒的な支持 サンダース議員と民主社会主義者


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 今年1月、厳寒の下で行われた大統領就任式。カメラは正装の大統領夫妻と来賓席の人たちをフォーカスし、そして一人座るバーニー・サンダース上院議員の姿を捉えた。防寒着に毛糸のミトンを身につけたその孤高な姿は、ドレスアップした華やかな来賓より強く印象に残った。

 サンダース議員の平服姿がSNSで拡散されて5日間で、関連グッズが大ヒットして180万ドル(約1億8800万円)の収益を上げ、サンダース議員の地元バーモント州の慈善事業団体に寄付された。今やカリスマ的存在であるサンダース人気が、うなずけるホットな話題であった。

 そのサンダース議員が突然登場し脚光を浴びたのが、2016年の大統領選。民主党の指名争いでクリントン氏と最後まで戦い、サンダース旋風を巻き起こした。サンダース議員の遊説の映像を見ると、若い世代の支持者が「バーニー!バーニー!」コールで盛り上がっていた。

 無所属で民主社会主義者を自称する、79歳のサンダース議員。「民主社会主義者」という語彙(ごい)が分からず後日、調べてみたら「社会の変革」という指針は理解できたように思う。

 アメリカ民主社会主義者が結成されたのは1982年。2017年の会員数6千人から、今では7万近くに増えて15人が州議会選挙で当選を果たしている。先の中間選挙で3度目の当選をしたサンダース議員は、ポーランド系ユダヤ人の移民の息子。父方の親族のほとんどがホロコーストの犠牲者で、一貫して反戦平和を訴え「草の根の草の根による草の根のための政治」を目指している。

 民主社会主義者の国政への躍進は目覚ましく、17年、政界に彗星(すいせい)のごとく現れたアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員の選挙結果は、地元民主党の現職ベテラン議員と共和党議員に勝利し世間を驚かせた。労働者階級で育ったコルテス議員は、大学生の時に父親が亡くなり、プエルトリコ出身の母親が清掃作業員やスクールバスのドライバーとして働いて生計を立てていた。

 コルテス議員はウエートレスやバーテンダーとして働きながら、民主社会主義者の一員として選挙応援や支援活動で社会の矛盾に立ち向かっていた。そして28歳の頃、史上最年少で国政への道を歩き出した。

 民主社会主義者の政策は、格差是正、国民皆保険制度の実施、LGBTマイノリティーの権利保護、教育ローンを帳消しにして公立大学を無料にする、低所得者向けの住宅支援、法人税を大幅に上げて富裕税の導入などを提唱し、弱者の味方として若者の圧倒的な支持を得ている。

 一方で穏健派や保守派からは、社会主義的な過激な政策だと批判され、資本主義社会こそが唯一個人の自由を守り、社会主義は個人の自由を奪い個人財産を認めず、国が主体になると嫌悪感をあらわにする。

 今、米国の若者らが理解する社会主義は、国による統制ではなく平等の意味合いが強い。アメリカの政治システムを否定するのではなく、議会民主制の下で公正な社会を築く事だという。ミレニアム世代が成人を迎え昨今の米国は経済、社会状況が著しく悪化している。若者らは企業の権力と賃金停滞、家賃、医療、教育費の高騰に不満を持ち、第一に掲げるのが社会の不均衡是正である。

 「1%の富裕層のために99%が犠牲になってはならない」と主張する庶民派のサンダース議員を始め、民主社会主義者の今後の動向が気になる。
 (鈴木多美子バージニア通信員)