国立劇場おきなわの三線音楽公演「古典音楽の美」が4月24日、浦添市の同劇場であった。2019年に「琉球古典音楽」人間国宝に認定された中村一雄をはじめ、県指定無形文化財の沖縄伝統音楽野村流と同安冨祖流、同湛水流の保持者が、流派の歌を独唱した。斉唱の出演者も含めて総勢27人の歌い手が、歌三線のみで、琉球古典音楽の魅力を伝えた。
古典音楽独唱は、野村流と安冨祖流の歌い手が交互に歌った。「本調子述懐節」では、歌三線を一音一音聞かせるような歌い方の比嘉康春(野村流)と、歌三線が一体となったような粘りのある歌い方の大湾清之(安冨祖流)が、美技と共に個性の違いでも楽しませた。ほか「述懐節」を山城暁(野村流)、照喜名進(安冨祖流)、「下出し述懐節」を銘苅盛隆(野村流)、濱元盛爾(安冨祖流)が歌った。
湛水流の独唱は島袋英治、宮里秀明、渡久山春憲が歌った。三線の三弦全てを打ち鳴らす手など、最も歴史ある流派ならではの、特徴的な技法の数々を披露した。
人間国宝認定後初の国立劇場公演への出演となった中村は、「本調子仲風節」と「世渡節」を披露した。世渡節は、中村がかつてメディアの前で初めて歌う際、師匠の知念秀雄に勧められた思い出の曲。世を渡る難しさを山川に架けられた丸太橋を渡ることに例えた歌詞に乗せて、滋味あふれる歌声を響かせた。
中村は昨夏に体調を崩し、声が一月以上も出なくなっていた。公演後に「処置が早かったおかげで10月後半に復調し、舞台を迎えられた」と医療関係者への感謝を口にした。「舞台はいつも緊張するが、歌い終えた後の満足感がいい」と目を細め、今後の古典音楽の発展に向けて「しっかりと歌を指導する体制を考えて細かい節入れ、工工四にないことの勉強をしていかないといけない」と語った。
全12曲、歌い方も含めると15通りの歌が楽しめた。優れた歌い手が自身で選んだ歌詞で披露した独唱は、どれも「もう1番聞きたい」と思わせた。制作の妙も光った舞台だった。 (藤村謙吾)