民衆苦難の歩み、刻む 名護・屋部 「眉屋私記」碑を除幕


社会
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眉屋私記文学碑を除幕する屋部中学校生徒会の生徒=19日、名護市の屋部親水公園

 【名護】記録作家・上野英信さん(1923―87年)が名護市屋部の山入端一族(屋号・眉屋)の歴史を記した代表作「眉屋私記(まゆやしき)」の文学碑除幕式が19日、名護市の屋部親水公園で開かれた。「眉屋私記」は1908年に炭鉱移民でメキシコに渡り、その後キューバに移った山入端萬栄さんや、辻遊郭に売られた末妹ツルさんらの人生を通し、近代沖縄民衆の歩みを描いた。

 上野さんの筆跡「眉の清(ちゅ)らさぞ神の島」の文字が刻まれ、後ろには名護浦(名護湾)の美しい景色が広がっている。式典には期成会のメンバーや関係者含む約50人が出席した。上野さんの長男の朱(あかし)さんは「屋部の人の誇りや民衆史を後世に残すためのもの。英信も心から感謝し、喜んでいるだろう」と話した。屋部中学校生徒会が除幕し、「眉屋私記」の冒頭部分などを群読した。

 文学碑建立の話は2019年11月に開かれた上野さんの三十三年忌の集いで提案された。昨年7月に地元住民や上野さんと親交のあった文化人らが眉屋私記文学碑建立期成会を発足。

 募金を募り企業など37社、個人259人、上野さんに関する著書を執筆したジャーナリスト・三木健さんの書籍販売が103件(180冊)で計410万9千円集まった。石碑設置は4月8日に完了した。期成会代表の三木さんは「多くの人から志をいただき、素晴らしい碑が建った」と述べた。