【記者解説】根拠薄い「良好な部活指導」 県教委体罰調査


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 コザ高校の部活生の「指導死」を機に実施したアンケートは、全体の回答率が調査対象の31.7%(1万2737人)にとどまった。体罰・ハラスメントの解決状況などを巡っては、部員と指導者の認識に歴然とした差があり、「全体として良好な部活動指導が行われている」(県教育委員会)と結論付けるには、あまりにも判断材料が不足している。

 今回の調査対象は県立中学を除く県立学校80校のみで、小中学校、私立学校は含まれていない。

 また、「勝利至上主義」が根強い強豪校に的を絞った調査にもなっていない。部活動に長年はびこるハラスメントの実態解明や、徹底した再発防止に向けた調査結果であるとは言い難い。

 県教委は、指導者と部員の関係性を「良好」と判断した根拠に、回答した部員の約8割が、指導者との信頼関係を「強く感じる」「感じる」と回答したことなどを上げた。

 一方、アンケートに応じた部員の約2割に当たる1290人は、指導者との信頼関係を「あまり感じない」「全く感じない」と回答した。アンケートに応じた部員が、調査対象者の36.2%(6539人)にとどまったことを考慮すれば、指導者との良好な関係を築けていない部員はさらに増える可能性が高い。「全体として良好」と結論付けるのは勇み足だ。

 ハラスメントを解決できずにいる部員は8割。相談先も同じ部の部員にとどまっている。安心して相談できる窓口の設置が急がれる。

 沖縄の未来を担う小中高校生が、伸び伸びと部活に励むことができる環境が求められている。
 (嘉数陽)