<シネマFOCUS>「アンモナイトの目覚め」 孤独と痛みで結びつく


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ

 愛と自由をてんびんにかけるものではないが、愛し合ったふたりの針が同じ分量をさすことは困難かもしれない。 19世紀イギリス。人嫌いで世間と距離を置きながら暮らす古生物学者のメアリー(ケイト・ウインスレット)と、裕福な化石収集家の夫を持つかれんなシャーロット(シアーシャ・ローナン)。交わるはずのないふたりが海辺の町で出会う。

 正反対の境遇にあるふたりを結びつけたのは互いのどうしようもない孤独と痛み。次第に解き放たれた二つの魂が恍惚(こうこつ)ともつれ合うが、そもそもが自由に生きるメアリーと籠の鳥同然のシャーロット。愛の重さは一緒でも愛の方向まではわからない。

 2大女優の演技に心とかされながら、時代がいかに女性の職業を狭め搾取してきたかと悔しくもなる。かってメアリーが発掘した化石の展示がしてある大英博物館。そこで見つめ合う(にらみ合う?)ふたりの心情にアフレコしていたら、愛と自由のはざまでのたうち回るメアリーにいとおしさが増す。監督はフランシス・リー。
 (スターシアターズ・榮慶子)