ブラジル名門大学で66歳奮闘 県系2世城間さん オンライン授業、勉強しやすく


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合格の通知を受け、入学前にキャンパスを下見する城間さん(右)と夫の明敏さん=2020年2月11日、本人提供

 ブラジルでは2020年3月後半から、新型コロナウイルス感染拡大に伴う隔離政策が始まり、対面授業が受けられなくなった。オンラインへ移行する中、多くの学生や教師が新しい生活に慣れるのに苦労しているはず。一方で、オンラインに変わって勉強しやすくなったという人もいるようだ。サンパウロ大学の学部2年生で、老年学科を専攻する城間ルシア紀美子さん(66)=那覇市2世=は、オンライン授業になったことで通学に費やした5時間の移動時間がなくなり、勉強しやすくなったという。

 城間さんは19年11月、ブラジル屈指のサンパウロ大学の入学試験に挑み、20年1月の2次試験も突破し合格をつかんだ。幼い頃から勉強が好きで、将来は医者か教師になるのが夢だったそうだ。パラナ州シアノルテの貧しい農家で生まれ育った城間さんは家庭の事情で13歳で退学した。嫁入りする少し前に実家はようやく一軒家を購入できたという。

 12歳でサンパウロに引っ越した。サンパウロでは1年だけ学校へ通い、退学してから家族は縫製業に従事し、家にミシン数台を並べて作業していたそうだ。ラジオの教育番組を聞きながら仕事し、向かい合う父親の上原文紀さん(故人)=小禄村出身=から沖縄や門中の話をたくさん聞いた。母親になってから子供たちを勉強させるために、日本語も勉強していたそうだ。結婚してからは夫婦共働きで、子供たちが家を出るまで忙しくしていた。

 学校の隣で文具雑貨店を営んでいた城間さん一家は2007年、長男が留学したのを機に店をたたんだ。同居していた母親の上原由紀子さん(故人)=具志頭村・東風平村2世=の世話をしながら初等中等教育修了資格認定試験に合格し、54歳で看護専門学校に進学し、2年で卒業した。その後、サンパウロ大学を受験した。

 義務教育を受けず基礎ができていないため、大学生になってからは苦労しているそうだ。「看護専門学校のようだと思っていたが甘く見過ぎた」と語る。それでも、1年間で受講した全科目と、その単位から割り出した平均点数が10点中9・1点(同期の平均値が7・75点)と好成績を残す。課題提出の締め切りに間に合わず、教官に連絡して遅れて提出することもあるそうだ。

 パソコンには慣れていないため、自力で間に合わないときは同期や家族にパソコンや大学のシステムの操作を教えてもらう。オンライン授業を受けられるようにインターネットを光回線に変更し、文字が小さいからと、机には大画面のモニターを二つ並べるなど環境も整えている。卒業後のことはまだ考えていないという。

 (城間セルソ明秀通信員)