【識者談話】沖縄、米中対立で危険性さらに 第2次台湾海峡危機「核報復」文書 野添文彬・沖国大准教授


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野添文彬氏(沖国大准教授)

 研究により、以前から第2次台湾海峡危機で米軍が中国への核攻撃を検討していたことは知られていた。今回リークされた米国防総省の文書には経過が具体的に書かれている。

 昨今も台湾を背景とした米中の緊張感は高まっており、沖縄が紛争に巻き込まれる危険性は当時より高まっていると言える。

 中国にとって台湾の統一は悲願だ。海軍力を高め、ミサイルも数千発有していると言われる今、台湾への武力侵攻が取りざたされている。仮に台湾有事に米軍が介入した場合、沖縄にある嘉手納飛行場などの米軍基地は攻撃対象となる。

 当時は米国の核兵器を含む軍事力は圧倒的に優越しており、中国を抑止できていた。だが今は、中国の軍事力向上によって米国の西太平洋における軍事的優位は失われつつある。

 当時と違い、中国は核兵器を所有し、増強している。米国も報復を恐れて簡単に核兵器の使用はできないだろう。だが、通常兵力レベルの衝突はあり得るし、その場合、沖縄がミサイル攻撃やサイバー攻撃を受ける可能性はある。

 米ソの冷戦時は両国間に危機回避のための対話のチャンネルが構築されていたが、今の米中は十分に構築できていないのが問題だ。

 軍事的に今の中国を抑え込むことには限界がある。戦争に発展しない緊張緩和の方策を探る必要がある。
 (国際政治学)