「声なき声知って」レズビアンの金武さん 退学、渡英…遺骨土砂でハンストをするまで


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レズビアンとして差別された体験を語る金武美加代さん=20日、名護市辺野古

 「あんた女ね」「男みたいな格好して」―。宜野湾市出身の金武美加代さん(47)=東京都=は27日までに、自らがレズビアンを公表していることと差別的な扱いをされた体験について、本紙取材に語った。沖縄でも「普通じゃないから(差別されて)当然さ」という言葉を投げ掛けられたという。金武さんは「何かを訴えるときに、性別や見た目は関係ない。ウチナーンチュにもいろんな人がいるように、性に関しても多様な人がいることを知ってほしい」と訴えた。

 沖縄戦戦没者の遺骨が残るとみられる本島南部の土砂を、名護市辺野古の新基地建設に使う計画に抗議するため、金武さんは3月に東京で、5月に那覇市の県庁前でハンガーストライキをした。2週間におよんだ県庁前のハンストには、多くの人が金武さんを激励しようと足を運んだ。一方、その中には金武さんの容姿を見て、セクシュアリティー(性の在り方)に踏み込む言葉を口にする人も多かったという。

 4歳ごろ、金武さんは自身のセクシュアリティーを自覚した。高校1年生の時に恋人ができたことをきっかけに、家族や友人にカミングアウトした。「(同性を好きになるのは)自分にとって自然なことだった」

 だが、その翌日から友人たちは金武さんを一斉に無視したり、ほかの親しい人が態度を変えたりした。次第に登校できなくなり、出席日数が足りず退学に追い込まれた。「沖縄は生きづらい」と感じ、県外の工場で働いた。

 自暴自棄に一時なったが、好きだった絵を描き続け、自分らしく過ごせる場所を探した。転機は21歳。本格的に絵を学ぼうと、英国ロンドンの美術学校に留学した。29歳で帰国し、2009年から東京でフリーのインテリアデザイナーとして活動する。

 LGBTQの仲間と好きなことをして、東京に自分らしく生きていける場所を見つけた。やがて、東京に住むウチナーンチュとして意識するようになり、米軍基地問題などの「沖縄への差別」を見過ごせなくなった。強権的に新基地建設を進める政府に、抗議の声を上げている。

 金武さんは19、20の両日、名護市辺野古に足を運び、県民同士が対立する新基地建設の現場を目の当たりにした。「差別に直面しながら声を上げられないウチナーンチュも、LGBTQの人もたくさんいるはずだ。私が発信することで、声なき声を知ってもらうきっかけになればいい」と決意を口にした。
 (嶋岡すみれ)