基地周辺土地規制法案の内閣委可決 自国民の利用も調査対象に 外国資本購入の懸念から変質


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 安全保障上、重要な施設周辺の土地利用を規制する法案がまとめられた当初の背景には、外国資本による土地購入に対する懸念の声があった。一方、法案は土地所有者などの国籍を問わず、対象区域で暮らす国民の土地の利用方法を幅広く調べるものに変わった。経済活動の影響に配慮した結果だが、米軍基地や自衛隊施設などが集中する沖縄では基地周辺で暮らす多くの住民が調査の対象となり、警戒を呼んでいる。

 基地周辺住民は警戒

 <制限の重さ>

 法案策定に向け、昨年11、12月に計3回開かれた有識者会議の初会合で、政府は、韓国資本による長崎県対馬市の自衛隊施設隣接地の購入など全国4件の事例から、地方議会の懸念の声を紹介した。これらが法案策定の根拠となった。

 地方議会で挙がったのはいずれも外国資本による土地買収への懸念だったが、出来上がった法案は自国民も調査対象にした利用規制に変わった。

 その理由について内閣官房は土地の売買自体を規制することは「制限として重い」との判断があったとする。法案は、外国人が土地を所有すること自体は規制されない。財産権への影響が小さいと見られたことが、現行スキームでの取りまとめを後押しした形だ。

 <逆効果>

 日本が批准する「サービスの貿易に関する一般協定」(GATS)も法案に影響した。協定には自国民と同様の権利を相手国の国民や企業にも保障する「内国民待遇」の規定がある。

 批准時に一部制限を付けることが可能だが、日本は土地取引に関し制限を付けず、国籍を問わず平等に扱うことが求められた。

 政府関係者は「外国人を狙い撃ちにするには、よほどの理由がないと厳しい」と、協定が大きな支障となったことを認める。

 一方、こうした配慮は対象区域ですでに暮らしている自国民を規制の網にかける制度設計につながった。

 特に基地と市街地が隣接する沖縄では、何万人もの住民が調査対象となる。

 基地から派生する諸問題の対応で県民の矢面に立つ防衛局職員が調査に携わり、個人情報を取り扱う可能性があることも警戒感を呼んでいる。

 26日の衆院内閣委員会で立民の森山浩行氏は、条約の規定を優先し「法律がゆがんでしまっている」と懸念を示した。

(知念征尚)