【記者解説】バスの大幅減収続くとどうなる?公共交通影響恐れも


【記者解説】バスの大幅減収続くとどうなる?公共交通影響恐れも
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 県バス協会の調査で、観光用などの貸し切りバス事業が、新型コロナウイルスの影響を受けて前年度比81・8%減と大幅な減収となった。路線(乗り合い)バス事業も協会会員10社で33・3%減少した。コロナ禍の収束が見通せない中で収益悪化が続けば、沖縄の公共交通のインフラ維持に影響する恐れもある。

 近年、旅行の個人化が進む中でも、県内の貸し切りバスはクルーズ船で入国するインバウンド(訪日外国人客)や修学旅行などの需要を捉えて収益を稼いでいた。しかしコロナ禍で、貸し切りバスの需要はほぼ消失した。インバウンドは2020年3月下旬以降ゼロが続き、修学旅行や遠足、部活動での利用も延期、中止が相次いでいる。

 同協会の小川吾吉会長によると、コロナ禍前から多くの路線バスは利用者の減少で厳しい収支状態が続いていたが、路線バスで生じた損失を、国や県、市町村などの補助金や観光事業の利益で穴埋めしていたという。観光事業の利益喪失の影響は、県内のバス路線網の維持にも直結する。小川会長は路線の維持について「現状では路線の見直しなどはない。なんとかしのいでいきたい」と話している。

 県は4月の補正予算で、路線バス事業者22社に対して、合計1億8370万円の支援金給付を決めた。赤字路線バスの補助事業費も、20年度(19年10月~20年9月)は県と市町村の補助額合計で4億6527万円となり、前年度比17・0%の増加となった。

 大きな支援ではあるが、観光の需要回復には長い時間を要すると見込まれる。観光インフラの貸し切りバスと、県民の“足”である路線バスの双方を維持していくために、利活用促進など行政の長期的な支援が必要となる。

(沖田有吾)