SDGsの世界観とは SDGパートナーズ代表CEOの田瀬和夫さんが語ったこと


社会
この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
オンラインで基調講演する田瀬和夫さん

 琉球大学は5月22日、SDGs(持続可能な開発目標)シンポジウム2021「沖縄らしく・世代を超えて・よく生きられる社会を目指して」を学内とオンラインで開いた。第1部の基調講演はSDGパートナーズ(東京)代表CEOの田瀬和夫さんがオンラインで出演した。講演内容を紹介する。 

 冷戦終結後の1990年代は戦争の10年だった。同時に人類は資源を使いすぎており、このままでは地球が持たないと気付いた。2000年代に入って、この「人間」と「環境」の二つを統合し、「サスティナビリティ」というSDGsの源流ができた。

 国連憲章は元は第2次世界大戦の戦勝国の合意だが、SDGsは15年時点で国連に加盟する193カ国が全会一致で採択した奇跡の文書だ。70億人が30年にこんな世界を子どもたちに引き継ぎたいと共通の理想を掲げた、人類の生存戦略の到達点だ。

 SDGsは前文から始まり、宣言、17目標、実施手段といった構成で、文書として人類の夢を語っている。日本では17ゴールばかり議論されるが、一番大切なことは前文に書かれており、その世界観は四つの言葉で伝えられる。

 一つ目は「すべての人々」。1990年代に経済成長を追求する中で富が集中し格差が広がった。民族的少数者や性的少数者など社会に参画できない人も多い。格差を解消しすべての人が参画できる社会を作るのがSDGsの哲学の一つだ。

 これと同等かそれ以上に重要なのは二つ目の「いっそう大きな自由」。人間にとっては自由があり、将来の選択肢を自分で選んでいくことが重要だ。つまり「自分らしい人生」だ。

 また主観的な幸福や充足はその人を変え、周囲を変え、社会の在り方まで変える重要な概念だ。WHOの健康の定義でもある「ウェルビーイング」つまり「よく生きる」は三つ目で、SDGsの中心的概念だ。

 四つ目は自分たちの世代だけでなく後に続くすべての世代のニーズを満たす、つまり「世代を超える」こと。これらを合わせると「世代を超えて、すべての人が、自分らしく、よく生きられる社会」となる。

 当たり前に思えるが、それがSDGsの世界観であり、人類が100年かけて育ててきたものだ。これに共感するならば、これを実現するために今自分にできることは何か、逆算して考える思考回路が必要だ。