数値下がらぬまま退院 逼迫、病床空けるため コロナ感染71歳男性


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血液検査の結果を見て入院中の様子を振り返る元歯科医の男性=7日、那覇市内(画像は一部加工しています)

 新型コロナウイルスに感染し、入院を経験した那覇市内の男性(71)が8日までに琉球新報の取材に応じ、逼迫(ひっぱく)する医療現場の様子を語った。入院調整に時間を要し、入院時は肺炎が進行していた。一時は重症患者を治療する病院への転院を勧められたものの、症状が治まったため、血液検査の数値が基準以下に戻らないまま退院したという。 

 男性は5月初旬に発熱やせきの症状があり、同居の妻子と共に民間のPCR検査を受けた。結果は全員陰性だったが、発熱が続き、別の病院を受診。再検査で陽性と判明した。コロナ禍で会食は控え、外出はファストフード店でコーヒーを飲む程度。感染に心当たりはなく「まさか」と驚いたという。

 当初、保健所は自宅療養を勧めたが、男性や妻が基礎疾患があることなどを丁寧に伝えると、入院の必要性が認められた。しかし、南部のコロナ病床がいっぱいとの説明があり、入院することになったのは中部の病院。同月6日、入院時の検査で肺炎が進行していたことが分かった。

 入院後はすぐに平熱に戻ったものの、血中酸素飽和度が低く、酸素吸入器を利用して過ごした。重症化の指標の一つとされるD―ダイマーの値(基準値0~0・5μg/ml)は入院時1・2だったが、3日後に4・3、6日後に16・1と上昇。主治医から「重症病棟への移送が必要になるかもしれない」と言われるまでに悪化した。

 検査の値が最悪を示した同月12日は大型連休後の感染拡大が始まった頃だ。忙しくなったのか、主治医が病室を訪れる回数は次第に減り、血液検査を受けても説明がない日々が続いた。

 主治医から説明がないまま、看護師から「病床を空ける必要がある」として退院への同意を求められた。回復に向かっていたが「主治医から検査結果の説明を受けたい」と答え、説明があった同月24日に退院した。D―ダイマーの値は4・6と基準を上回っていたが、説明を受けたことで納得した。

 男性は保健所や病院の対応について「みんな頑張ってくれた結果」と理解を示す。入院した18日間で感じたのは、ワクチン接種の遅さだ。「米国は接種が進んでいる。県のトップと米軍のトップで話し合い、協力できないか」と提案する。男性は元歯科医で「歯科医は血管だらけの口内を注射する。筋肉注射くらいはたやすい」と話し、依頼があればワクチン接種の打ち手として無償で協力する意思も示した。
  (稲福政俊)