海軍壕「遺骨回収を」 遺族が沖縄県に調査要望


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海軍兵だった兄の遺影を抱き、旧海軍司令部壕の未発掘部分の調査と遺骨収集を求める新垣宏子さん(右)と娘の大城美恵子さん(左)=県庁

 沖縄戦で海軍兵だった兄を亡くした新垣宏子さん(93)=糸満市=と、沖縄戦遺骨収集ボランティア「ガマフヤー」の具志堅隆松代表は10日、県庁を訪れ、旧海軍司令部壕の未発掘部分の発掘調査を早急に行い、遺骨を回収して遺族に返還するよう要望した。新垣さんの兄の遺骨は見つかっておらず、沖縄のどこで亡くなったかも分からないという。新垣さんは「兄は海軍だったので海軍壕の中に遺骨があるのではないか。私が生きている間に、遺骨を探して母に報告したい」と訴えた。

 新垣さんの兄、安村昌範さんは海軍に召集され、1945年6月14日に沖縄で亡くなったという。新垣さんが兄と最後に面会したのは44年11月ごろ。兄は那覇市垣花町の民家で、沖縄方面海軍根拠地隊の将校付きの新兵として働いていた。新垣さんにボンタンアメとせっけんを手渡してくれたのが最後となった。

 具志堅さんによると2008年か09年ごろ、海軍壕の遺族の関係者から旧海軍司令部壕について「埋まっている部分があるので遺骨収集ができないか」と相談があったという。具志堅さんは「厚労省が進めるべき問題だ。沖縄の埋没壕は旧海軍司令部壕以外にもまだたくさんある。ぜひ遺骨収集に着手してほしい」と要望した。

 新垣さんの両親は、戦後も息子を亡くしたことを悔やみ続け、沈んだ日々を過ごしたという。兄や遺骨の話を避け、息子がどこで亡くなったか気にする母親をなだめてきた新垣さん。亡くなるまで息子を思っていた母を思い、県への要請を決めた。対応した県保護・援護課の大城清剛課長は「事実関係を確認した上で、何ができるか検討していきたい」と答えた。

 新垣さんは、厚労省が実施する遺骨のDNA鑑定にも参加する予定。厚労省は沖縄で見つかった遺骨のDNA鑑定に参加する遺族を募集している。