「芸術の力で人々を応援」 コロナ禍のクラシック公演 ビューローダンケ代表・渡久地圭に聞く


この記事を書いた人 Avatar photo 上里 あやめ

 国の緊急事態宣言の発令を受け、沖縄県内の公演やコンクールなどは延期や中止が相次いでいる。昨年からのコロナ禍で、クラシック音楽公演における感染症拡大防止対策のマニュアル作成や、感染防止策を施した企画公演をプロデュースした、フルート奏者でビューローダンケ代表の渡久地圭に、昨年の活動を振り返ってもらい、今後の課題を聞いた。

活動について語る渡久地圭=2日、那覇市泉崎の琉球新報社(ジャン松元撮影)

 昨年6月以降、県内のクラシック音楽団体の有志は、活動再開を探るため合唱時の飛沫(ひまつ)防止を検証し、ロビー活動における感染防止対策の実証実験を重ねた。11月にはクラシック音楽公演における感染症拡大防止対策のマニュアルを作成した。県立中部病院の感染症内科医・高山義浩医師ら専門家の監修の下、新しいコンサートの過ごし方を紹介する動画を制作。ユーチューブで配信し、公開から約半年の間に再生回数は1万回を超えた。

 渡久地は「一度目の緊急事態宣言を乗り切れば動き出すと思っていたが、簡単には終わらないことを感じた。不安な状況を共有し合い、この先どのように活動できるのか、クラシック団体の有志のみんなで考え始めたのが大きかった」と振り返る。

 外出自粛の山場が過ぎた9月頃から、公演活動の場が徐々に戻っていった。渡久地自身も、琉球芸能やバレエ、クラシック音楽をコラボレーションした企画公演「一千一秒物語」や、那覇市内での公演とワークショップを企画した「ロミジュリ!~那覇の街を走り出す~」などを実施した。文化庁や那覇市の助成を活用して、公演や映像収録、配信を行った。作成したマニュアルを実施するため、サーモメーターのレンタルや検温のための導線の確保、座席の消毒、楽屋での道具の個別仕様などの感染防止策を講じた。ロビー業務スタッフの確保と連携は特に重要だったと振り返る。得た経験を生かし、今年はビューローダンケ主催での企画公演を予定している。

 活動の原動力は、演奏を通して感じる作品のエネルギーや感動を、他者に届けることだという。相次ぐ公演の中止や延期について「公演でクラスター(集団感染)は起きていない。(開催の)自粛を求められる理由も含めて、もう少し理解ができる形にしてもらいたい」と訴える。

 渡久地は「自粛期間中に芸術活動が“不要不急なもの”なのか、何度も考えてきた。芸術の価値をどう社会に活用し共有できるのか改めて課題だと感じる。できることは芸術の力で人をなぐさめたり、エールを贈り続けることだ」と前を向いた。
 (田中芳)