【記者解説】県民の私権制限も 政府、規制行為を明示せず 土地利用規制法


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住宅密集地の中にある米軍普天間飛行場。基地を多く抱える沖縄県で、土地規制法の施行による住民の負担増加は確実だ

 土地利用規制法が16日未明の参院本会議で可決・成立した。米軍基地や自衛隊施設が集中し、有人国境離島でもある沖縄は、多くの地域が対象区域となる可能性が高い。区域内で暮らす住民の多くが調査の対象となることになる。私権に一定の制限がかかることも確実だ。辺野古新基地建設や自衛隊の「南西シフト」といった目に見える基地負担増加に加え、規制措置という制度面でも負担が強まることになる。

 国会審議が進むにつれ法案の問題点が次々と浮上し、メディアも取り上げたが、議員の中では「安全保障上、何らかの規制措置は必要だ」との認識も根強かった。14日の参考人質疑では与党推薦の有識者も法案の問題点に触れるなど疑念は頂点に達したが、与党は同日中の採択を提案するなど強硬姿勢を貫き、野党は法案が抱える問題を突き崩すには至らなかった。

 法案は土地利用を規制するものだが、政府は具体的な規制対象となる行為は法成立後に閣議決定する「基本方針」で示すとし、条文に盛り込まなかった。だが、基本方針で示すとしたのも「例示」であり、実際には時の権力が問題行為を決める懸念が強い。

 参考人質疑では、戦前につくられた「要(よう)塞(さい)地帯法」でも、できない行為を明示しているとの指摘も出た。安全保障の名の下に、旧軍の暴走を許した明治憲法下よりも政府の説明姿勢が後退していることは「民主主義の危機」と言っても過言ではないだろう。

 最大の問題は、規制行為や対象区域が閣議決定で決まる点にある。法の成立後は、政府内や審議会での検討作業が焦点となる。法がどのように運用されているか、政府による情報公開と国会の監視が強く求められる。 (知念征尚)

 

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