壁画アートDENPAさん、調和とポジティブ「伝播」したい


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画家のDENPAさん

 街を見渡せば住宅の壁などに壁画が描かれている。まるで街全体が大きなキャンバスかのようにアートが日常に溶け込む。壁画制作など県内外で活躍する画家・DENPA(デンパ)さんは「生活空間に描かれる作品は責任を伴う。画家自身の個性と人々が望むものとのバランスを大切にしている」と語る。

 Q:アートとの出合いは。 「小さなころから絵が好きで、小学校低学年のころから画家になることを夢見ていた。一方で、成長とともに周囲の声から、画家は職業としては成り立たないと思った。大学に進学し、安定を目指した。その後、上京し、時間に追われた生活を送りながら心身ともに疲れ果てていた」

 「26歳ころに沖縄に戻ってきた。プリントTシャツの会社を立ち上げ、2016年には沖縄市でギャラリーを立ち上げた。アーティストの作品を発表する場を設けることができて良かったと感じる反面、自分自身が伸び悩んでいる気がした。プロフェッショナルを目指したいと考え、ギャラリーを閉じた。今、画家一本で取り組んでいる」

 Q:沖縄市やうるま市の伊計島などに壁画作品がある。どういう経緯で描かれたのか。

 「ギャラリーを閉じることを決めた時に、自分自身の作品を周囲に“試食”してもらいたいと思った。10カ所キャンペーンと銘打って、『描かせてください』とお願いをして回った。沖縄はアートへの理解が深い。快く応じてもらい、その後は仕事が増えていった。伊計島の作品は『シマダカラ芸術祭』などのときに描かせてもらった」

 Q:公共の場に描くときに大切にしていることは。

 「アーティストとしてとがらない場所ということを自覚することだ。独りよがりではいけない。まずは話を聞いて、依頼者がどういうアートを望んでいるのかを聞く。その上で、自分自身の中に落とし込んで、自分のアーティストとしての個性も生かしながら、環境になじむ作品を心掛けている」

 Q:作品をどう味わってほしいか。

 「日付をタイトルにしていることが多いのは、好きに楽しんでほしいから。自由に感じて作品を面白がってほしい。ポジティブなインパクトを『伝播(でんぱ)』できたらうれしい」

 19日から宜野湾市嘉数のスタジオ085で約3年ぶりの新作展を開催中。27日まで。(聞き手・新垣若菜)

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 DENPA(デンパ)1983年生まれ、うるま市(旧具志川市)出身。琉球大学教育学部卒業後、上京。服飾学校に通いながら塾講師などを経て帰沖。2016年に沖縄市パークアベニューで画廊兼店舗を開店。現在は店舗を閉め、壁画制作など画家として創作活動を展開している。