観光業のワクチン接種、夏休みに向け準備加速


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新型コロナウイルスワクチンの接種を受けるANA沖縄空港の社員(左)=21日、那覇空港内会議室

 県内でも21日から、全日空(ANA)や白石グループの観光関連企業を皮切りに、新型コロナウイルスワクチンの職場接種が本格的に始まった。沖縄県の緊急事態宣言適用が7月11日まで3週間の延長となる一方で、観光業界では「書き入れ時」と見据える夏休み時期に向けて従業員の接種をできる限り進め、宣言明けの観光客受け入れ準備を整えようという動きが加速している。

 沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB、下地芳郎会長)によると、県内観光関連35団体でつくるツーリズム産業団体協議会の加盟団体アンケートで、回答20団体のうち、職場接種を実施予定としたのは4団体、条件がそろえば実施したいと回答したのが6団体だった。

 職場接種の申請には、千人単位の接種対象者を集めることのほか、打ち手の医療従事者や会場の確保、費用負担などが企業・団体の課題となる。

 OCVBは21日、那覇市医師会(山城千秋会長)との間で医療従事者の確保、派遣についての覚書を交わした。観光関連企業や団体が職場接種に向けて一定の計画を作った上で、接種の担い手の医師や看護師らを確保できない場合に、OCVBが覚書に基づき医師会との調整を担う。

 下地会長は「沖縄観光の復活なくして沖縄経済の復活はない。安心安全な沖縄旅行を提供するためにも、観光客と直接接する観光業従事者へのワクチン接種は急務だ」と強調する。

 一方で、職場接種の枠組みでは対応が難しい、個人事業主などの小規模な観光関連事業者も県内には多い。下地会長ら沖縄ツーリズム産業団体協議会は、県と県議会に対し、広域ワクチン接種センターを活用した、64歳以下の観光関連事業者への優先的接種を申し入れた。

 県庁で照屋義実副知事と面談した下地会長は、宿泊と飲食業だけでも6万人、小売りなどを入れると約10万人の観光業従事者がいると説明した。7月中旬から航空各社が増便するなど本格的な観光シーズンを迎えるとして、「人の往来が拡大する中で、早期に接種を進め、しっかりした受け入れ体制を作ることが大事だ」と訴えた。