祖父に託された思い胸に 対馬丸遺族の新里さんが母校で講演


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城北中学校の生徒に向け「自分を愛すること」の大切さを説く新里清明さん=22日、那覇市首里石嶺町の同校

 対馬丸遭難者遺族会元会長の新里清篤さんの孫、新里清明さん(36)は22日、母校の那覇市立城北中学校で平和教育講演会を開いた。清篤さんは対馬丸事件で母親と妻子の家族全員を失った。亡くなった子ども全員に「清」の名を付けていたが、後妻との間に生まれた子には「清」を付けず、孫の清明さんにだけ「清」の付く名を授けた。清明さんは祖父から託された思いを胸に「自分を愛してあげて」と生徒にメッセージを送った。

 清篤さんは戦時中、校長として疎開を促進する立場にいて、率先する意味を込めて家族を対馬丸に乗せたという。戦後は記録や証言をまとめた「あゝ学童疎開船対馬丸」を著すなど、悲劇を伝え続けた。

 一方、清明さんには体験を話すことはなかった。清明さんは2014年に対馬丸戦没者の慰霊碑「小桜の塔」を訪れ、「清」の名が付く祖父の子らの刻銘を見て「ちゃんと生きてと言われているようで涙が止まらなくなった」という。

 清明さんが自身の思いを話すのは初めて。対馬丸の悲劇を伝えるだけでなく、国内の自殺者が2万人いることを「心の戦争」と表現し、命の大切さ、自分を愛することの重要さを訴えた。

 講話は放送部の3年生、篠崎めいさんと岩井さくらさんが進行役を務め、その様子を全学級に配信した。篠崎さんは「他国に比べ日本は平和だと思っていたけれど、『心の戦争』を考えると平和とは言えないと思った。自分を愛すること、自分らしく生きることを意識したい」と話した。