ハンセン病元患者、国の和解金知らず…差別恐れ病気隠し報道も避け 請求期限後に国提訴


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那覇地方裁判所(資料写真)

 ハンセン病元患者の女性が、国と患者側との2002年の基本合意に基づき、国に対し、和解金に相当する600万円の損害賠償を求めて那覇地裁に提訴したことが25日、分かった。差別を恐れて周囲に元患者であることを伏せ、ハンセン病に関する報道を一切見聞きしないようにしていたため、国が和解金請求期限を16年3月と定めた基本合意を知らなかったとしている。

 提訴は今年3月23日付。原告側によると、6月25日にあった弁論準備手続きで国は請求棄却を求め、具体的な主張は後日するとした。原告代理人の松崎暁史弁護士は「制度を知らなかったり、名乗り出られなかったりする人は他にもいる」とし、国が広く補償すべきだと指摘した。

 訴えによると、女性は1960年代に発症。服薬治療を受け、療養所には入らなかった。70年代に結婚後、夫にもハンセン病のことを告げなかった。病気を隠す負い目や、子どもが発症するのではという不安から、うつ病を患った。

 女性は、ハンセン病に関する報道や話題に触れないようにしていた。強制隔離を定めたらい予防法の96年の廃止や、隔離を違憲とした01年の熊本地裁判決、療養所の非入所者に国が和解金を支払うとした02年の基本合意を知ることができなかったとしている。

 19年に元患者家族への補償金支給制度が始まった後、周囲から女性の親族に関する補償金申請を勧められる中で、自身が元患者だったと初めて夫たちに告白したという。

 女性は、多大な精神的重荷を背負い続け、心を開いて交流できなかったため家族関係の構築が著しく阻害されたなどと主張。02年合意で支払われる額と同じ600万円を請求した。

(共同通信)