米軍人らとのトラブル 県設置の女性相談窓口 解決支援 なお手探り


社会
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 2019年4月に北谷町桑江で発生した米兵による女性殺害事件を受け、県が設置した米軍人・軍属との家庭問題や交際トラブルを抱えた女性の相談窓口が、4月から「国際家事福祉相談所」に名称を変え、試行錯誤をしながら運営している。離婚や養育費請求、面会交流など、相談者からさまざまなニーズがある中、相談所がこれまで解決に導いたのは米軍関係者と県内在住女性の双方が話し合いに協力的な場合の離婚と認知に限る。4月から事業を受託した社会福祉法人は「全てのニーズを解決できるわけではない。何ができるか手探りの状態だ」と模索をしている。

慣習や地位協定が壁

 相談所には2人の支援員が配置される。女性に付き添い、米軍側の当事者との話し合いや米軍窓口への問い合わせ、相談者の代理で面談をする。当初は相談者からニーズが高い養育費請求や面会交流の設定に向けた支援も想定していた。だが、男性側が協力的ではない場合は、調整は容易ではないとして今は相談を受け付けていない。

 代わりに、相談所のアドバイザーとして協力する国際家事相談NPO「ウーマンズプライド」(スミス美咲代表)や弁護士へつなげる対応を取っている。

 相談所は1月にスタートし、4月から社会福祉法人美さと児童園=沖縄市=が受託先となった。4月は7件、5月は12件の窓口相談があった。

 同園の前川英伸園長は、日米地位協定の壁や慣習に違いがある中、米軍側に家事相談をワンストップで受けられる「カウンターパート」(対応機関)が存在しないことを課題に挙げる。「私たちは軍内部の制度も十分に把握できていない。本年度はできることと、できないことを明らかにする。障壁はどこにあるかを県に報告し、次年度以降の事業の方向性を検討してもらう」と話した。

 事業を所管する県青少年・子ども家庭課の担当者は「相談所は裁判外紛争解決手続き(ADR)機関ではないので、相談者本人に代わって養育費の請求などができるわけではない。相談者の悩みを児童相談所など他機関につないで対応する。将来的には米軍内の支援機関とつながり、調整していくことも目指したい」と話した。

 相談所は3月まで北谷町役場1階のロビーにあったが、プライバシー確保の観点からロビー奥にある部屋へ移った。相談所の問い合わせは(電話)080(7980)4291。

 (梅田正覚)