大城立裕氏「カクテル・パーティー」 読者意識し改稿30カ所 泊高校教諭が発表


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 沖縄文化協会の2021年度公開研究発表会が26日、動画投稿サイト「ユーチューブ」を活用したオンライン形式で開かれ、7件の発表があった。作家の故・大城立裕氏が執筆し、沖縄初の芥川賞を受賞した小説「カクテル・パーティー」の手書きの生原稿を基に、出版される際に原稿の記述がどう変更されたのかについて、県立泊高校国語科教諭の金城睦(あつし)さんが発表し、県内外で広く読まれる工夫を凝らしたとの見方を示した。

沖縄文化協会の公開研究発表会で小説「カクテル・パーティー」の生原稿(日本近代文学館所蔵)の写真を示しながら、作品テーマに関わるせりふ部分が削られたことなどについて紹介する金城睦さん=26日(沖縄文化協会のユーチューブ配信より)

 金城さんは「カクテル・パーティー」の文章では、米軍基地や沖縄の歴史に関する説明文を入れたり、作品に登場する学院名を「上海の同文書院」から「上海の学院」に変更したりした点に触れた。金城さんは「ウチナーンチュの読者だけに限らず、ウチナーンチュ以外の読者を意識した」などと指摘した。

 金城さんは「カクテル・パーティー」の生原稿で、書き換えられた点が少なくとも30カ所確認できたことを紹介した。「説明的な記述によって、作品世界の深まりがかえって薄まってしまう表現部分については削除している」などと考察した。「作者による修正だけでなく、発行所関係者による修正があるのかどうか、さらなる検討が必要」などの課題を挙げた。

 沖縄文化協会の波照間永吉会長は金城さんの研究について「基礎的で、誰かによってなさなければならなかったことを開拓した。意義のある発表だった」などと話し、さらなる研究の進展に期待した。

 同協会の公開研究発表会は27日も午前10時から午後4時半までユーチューブを活用したオンライン形式で配信する。民俗や芸能、琉歌、音楽などの研究について8人が報告する。