「5年で結果出す」ブランド力を高く評価する投資側 懐疑的な声も<三つ星の針路・オリオン買収>2


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オリオンビールのMBOについて経緯を説明する野村キャピタル・パートナーズの前川雅彦社長(右)とカーライル・ジャパン・エルエルシーの富岡隆臣マネージングディレクター=23日午後、浦添市城間のオリオンビール

 オリオンビール株の買い付けを手掛ける野村キャピタル・パートナーズ(野村ホールディングスグループ)の前川雅彦社長は、記者発表の席で、感情を込めながら語り出した。「今日、皆さまにお話ししたいことは真実です」。野村とカーライル・グループによるオリオン買収が明らかになると、敵対的な買収、不動産が狙いと指摘されるなどさまざまな報道が出たことを説明した。「すべて事実ではありません。悲しい報道でした」と言い切った。

 野村とカーライルは、オリオンに高いブランド力があることを買収の理由に掲げる。カーライル・ジャパン・エルエルシーの富岡隆臣マネージングディレクターは「オリオンは高い地域性と認知率があり、商品のリピーターも多い。これだけ強いブランドを築いたメーカーはまれだ」と評価する。その半面でビール市場の縮小や競争の激化により「ブランド力がむしばまれている」と感じている。

 オリオンの課題に若い世代や女性に飲まれていない「偏った消費構造」(富岡氏)があるとし、会員制交流サイト(SNS)も活用しながら商品のPRを進める予定だ。海外輸出については収益拡大が見込まれる地域に絞って展開し、高い付加価値を付けて売り込む方針も示している。富岡氏は「オリオンはおいしいと評価を受けており、その価値を伝えていく」と強調した。ホテル事業については、改装やイベント企画などを通じて稼働率を高める考えだ。

 ビール事業の拡大、企業価値の向上、ホテル事業の維持・発展など、23日の記者発表では買収のメリットが多く紹介された。それでも、オリオン関係者は「会見ではいいことしか言わない。すべては信じない方がいい」と断言する。野村とカーライルはすでにオリオンの経営状況を詳しく分析しており、課題を明確に洗い出しているという。「海外輸出も含めて不採算部門はなくなるだろうし、人事の一新も行われるかもしれない」と予想する。金融関係者も「ビール事業を伸ばすと言っているが、本意は別にあるのでは」と懐疑的に見ている。

 カーライルは国内外で豊富な実績があり、国内菓子メーカーの事業拡大を後押ししたことでも知られている。野村としては、自己資金での投資再開第1号案件となるオリオンとの事業を、何としても成功させたいはずとの見方もある。両社がオリオンの経営に関わる期間として示したのは5年だ。オリオンの未来を切り開き、沖縄のビールとして発展させることが、買収を不安に感じる県民を納得させる唯一の手段となる。
 (平安太一)