株主は「外資に白旗」「沖縄の企業」継続願う<三つ星の針路・オリオン買収>3


この記事を書いた人 Avatar photo 田吹 遥子
買収受け入れ発表当日のオリオンビール本社。午前中から慌ただしい動きが見られた=23日、浦添市城間

 野村ホールディングス(HD)と米投資ファンドのカーライル・グループによる買収が確定的になり、オリオンビール株主の一人は悔しさとさみしさが入り交じったような表情でつぶやいた。「外資に白旗を揚げたようなものだ」。地元企業のオリオンを愛し、長い間、支え続けてきた。だからこそ「(オリオン経営陣には)もっとやれることがあったはずだ」との思いは強い。

 オリオン買収に向けた動きは数年前からあった。創業家の一部がオリオン本社の土地や建物の売却を模索し、株式を売ることも検討していた。複数の関係者によると、当初はオリオン側への売却を打診していたが、折り合いがつかずに頓挫したという。その後、株式の売却先として浮上したのがカーライルだった。しばらくして野村HDの参入が持ち上がり、当初はカーライル側との綱引きもあった。最終的にはオリオンの経営課題を解決することで両社の目的が一致し、共同で買収を進めることが決まった。

 オリオン関係者は「経営陣もカーライルのような大きなファンドが来るとは予想してなかったはずだ。カーライルが相手では太刀打ちできないと考え、やむを得ず受け入れを前提に交渉を進めたのだろう」と推測する。

 オリオン株の買い付けは24日から始まり、100%の取得を目標としている。買い付け価格は1株当たり7万9200円。オリオン株の実勢価格を大きく上回る高値が提示された。株主はオリオンと関係がある事業者や個人が多くを占めているという。オリオンが買収を承認している状況下であれば、ほとんどの株主が買い付けに応じるとの見方が強い。

 ある株主は「ここまで来てしまったことは非常に残念だ。でも、やむを得ないとの思いもある」と胸の内を明かす。現在の経営のやり方に疑問を抱く意見が聞こえてくることもあり「(買収によって)何かが変わってくれればいい」と語る。野村HDとカーライルには「沖縄のことを尊重して、沖縄の企業としてオリオンビールを発展させてほしい」と願っている。

 株主を含め、オリオンに深い愛着を抱く県民は多い。「外資の参入が何をもたらすのか」と不安視する声のほか「地元のビールじゃなくなるなら、もうオリオンは飲まない」と突き放す意見も上がっている。オリオンが買収受け入れという道を選んだ以上、株主や県民に対する丁寧な説明も必要になる。
 (平安太一)