酒税軽減継続は不透明…経営基盤の変化で議論も<三つ星の針路・オリオン買収>5


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酒税軽減措置の延長を求めて、自民党税調小委員会に出席する国会議員らにプラカードを掲げるオリオンビールの嘉手苅義男社長(当時、写真右)ら=2016年11月30日、自民党本部

 「オリオンビールでカリー」―。沖縄のビールとして親しまれ、宴席では乾杯の代名詞的存在となっているオリオンビール。沖縄のビールだからこそ認められてきた酒税の軽減措置を、46年間にわたって受け続けている。軽減額は、累計で約1千億円近くともいわれている。買収によってすぐに軽減措置が打ち切られることはないが、経営基盤が変化することによって今後の税制改正の議論では「どうなるか分からない」(政府関係者)との声も聞こえてくる。

 23日夕、オリオンビール本社で行われた記者会見で、記者からは復帰特別措置の一つである酒税軽減についての質問が相次いだ。これに対し與那嶺清社長は「大変難しい問題。私がコメントして各関係いろいろ影響も与える。弊社としては引き続き…」と言いかけたところで、テーブルに目を落とし「というか大変政治的な部分もある。難しい質問なので、そういう観点から回答は控えたい」と直接的な言及を避けながらも、軽減措置継続の鍵を政治が握っていることを色濃く示した。

 酒税軽減措置は本土復帰後の経済的混乱を防ぐため、激変緩和措置として特別に適用され、これまで9回にわたり延長されてきた。19年からも2年間の延長が決まっている。沖縄国税事務所によると、沖特法の適用が始まった1972年度から17年度まで、酒税は累計1316億円が軽減されてきた。うち泡盛の軽減額が438億円。その他の内訳は明らかにしていないが、ビールや発泡酒、県内の泡盛メーカーが製造するウイスキーやリキュールなどが含まれる。

 軽減措置は県民にとっても、競合他社より安価でオリオンを購入できるという恩恵があった。350ミリリットル缶ビールでは、本来税額77円の税額が、15円安い62円になる。

 今回の買収は、軽減措置の条件である(1)復帰前から県内で製造免許を受けている(2)県内の製造場で製造(3)県内に出荷する酒類―を満たしているため、酒税の軽減措置が切れることはない。

 しかし国は、軽減措置の延長を決めた理由を「経営基盤の強化」としている。今後、外資の参入によりオリオンビールの経営が安定した場合、軽減措置の必要性が議論されそうだ。
 屋比久盛敏県商工労働部長は「収益性が改善すれば軽減措置がいらないということにもなるかもしれない。措置がない状態で頑張るのが本来だ。2年後の判断がどうなるかだ」と延長は厳しいとの見方を示した。(仲村良太、中村優希)(おわり)