エンタメ系妄想ドキュメンタリー?「民主主義切望の時代体験を」 映画「サンマデモクラシー」山里監督に聞く(上)


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 ドキュメンタリー映画「サンマデモクラシー」(沖縄テレビ制作)が3日から那覇市の桜坂劇場で公開される。半世紀以上前の沖縄で起こされた大衆魚への不当課税を問う「サンマ裁判」を軸に、米軍統治下の圧政と闘った魅力あふれる人々に光を当て、民衆が自らの力で民主主義と自治を獲得する意義を照らし出す秀作だ。テレビ番組を99分の劇場版映画に仕上げた山里孫存(まごあり)監督(沖縄テレビ報道制作局次長)に聞いた。

「サンマデモクラシー劇場版」への思いを語る山里孫存監督=6月29日、那覇市久茂地の沖縄テレビ

 Q:サンマ裁判を取り上げた経緯を聞きたい。

 「同級生が、米軍統治下のサンマ裁判を担った裁判官の父を誇らしげにフェイスブックで記していた。興味を持ち、文献などを調べ上げた。当初は、高等弁務官による米側裁判所への裁判移送命令(友利・サンマ裁判)に、県民の立場からあらがった裁判官たちをドキュメンタリーにする企画を立てたが、最初にサンマ裁判を起こした玉城ウシさんの生きざま、ウチナー女性としての強さが魅力的で、彼女に焦点を当てた企画に変えた。民間放送教育協会のスペシャル企画に採用され、系列局の枠を超えて全国放送された」

 Q:映画化により、より人物像が活写され、内容が濃密になった感じがする。

 「時間の制約があるテレビでは人物像を深掘りできずに心残りがあった。ただ、番組放映後、多くの反響が寄せられ、ウシさんらの新たな情報が届いた。映画化すれば、ウシさんや周囲の人たち、裁判の代理人だった下里恵良立法院議員の破天荒な生きざまなど、魅力あふれる人々の人物像を時代のうねりとともに丹念に描き直せると考え、ゴーサインをもらった。高等弁務官にあらがった瀬長亀次郎氏らを含め、時代背景とさまざまな要素がパズルのように組み合わさった。米軍の圧政にあらがい、民主主義を切望し、自ら行動した人々が織り成した時代がクリアによみがえる作品に仕上がったように思う」

 Q:作品に込めた思いと県民へのメッセージは何か?

 「日本復帰当時、私は小学2年生で、ドルから円への切り替えは衝撃だった。今、米軍統治下の沖縄をイメージできない世代が増えている。沖縄の現状は、琉球王朝時代からの近現代史を押さえないと見えてこない面がある。6人の高等弁務官が統治した15年間がどういう時代だったのかを体感してもらえると幸いだ。沖縄の復帰50年記念作品と思っている。時代を彩った群像劇、エンタメ系妄想ドキュメンタリー作品を県民にも、本土の国民にも楽しんでいただいた先に、何がしかの余韻があり、沖縄発の情報の見方に変化があるといいなと考えている」

 

▼インタビューの続きはこちら(7月9日夜公開)

 

(聞き手 編集局長・松元剛)
(「サンマデモクラシー」は3日から那覇市の桜坂劇場で公開)


 やまざと・まごあり 1964年、那覇市生まれ。89年に沖縄テレビ入社。「戦争を笑え 命ぬ御祝事さびら!沖縄・伝説の芸人ブーテン」で放送文化基金賞ドキュメンタリー番組賞・企画制作賞を受賞。18年に「岡本太郎の沖縄」を製作。