【深掘り】辺野古サンゴ訴訟 県敗訴 知事「県の主張は合理的」 設計変更不承認構え


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国が米軍新基地建設を進める名護市辺野古の沿岸部=2020年12月

 名護市辺野古の新基地建設で、農林水産相が県に沖縄防衛局のサンゴ特別採捕(移植)を認めるよう是正指示したのは違法とし、県が指示取り消しを求めた訴訟で6日、県の敗訴が確定した。最高裁は上告を棄却したが、2人の裁判官は設計変更申請の前だったことなどを挙げて県の判断を「違法であるとは言えない」とする反対意見を示した。新基地建設反対を訴えてきた玉城デニー知事は「画期的」と評価。県は今後、反対意見でも言及された沖縄防衛局の設計変更申請を不承認にする構えだ。あくまで基地建設を進める立場の国側も、設計変更を巡る県の判断を注視する。

 玉城知事が「県の主張に正当性があると確信した」と評した反対意見は、公有水面埋立法による埋め立て承認の要件が「海底などの情報が不確実な段階で審査がなされることも想定され、承認の時点で確実に判断することが困難な内容を含む」と指摘している。仲井真弘多元知事の埋め立て申請承認後に判明した、大浦湾の軟弱地盤の存在などが当てはまる。

 県関係者は判決を「(設計変更についても)玉城知事が新たな状況を踏まえて白紙状態で判断できるということだ。負けたのは残念だが、今後につながる」と力説した。設計変更の不承認後に予想される裁判闘争でも、県側はこの理論を生かしたい考えだ。

 県側の敗訴に、与党県議は「予想の範囲内」と受け止める。一方、勝訴した国側は「サンゴを移すだけなら問題はないはず」(防衛省幹部)と見る。反対意見が付いたことには「詭弁(きべん)ではないか」と不快感をにじませた。

 今回の訴訟では、サンゴ移植で県が「標準処理期間」とする45日間を大幅に超えても採捕申請を判断しなかったことを根拠に、国が是正指示を出したことの違法性は認められなかった。

 県は設計変更申請を巡り、昨年5月、判断期間の目安として「163~223日」と提示している。休日や沖縄防衛局に対する質問回答待ちの期間は含まないが、本紙の試算では7月上旬に上限に達する見込みだ。

 昨年4月に沖縄防衛局が県に設計変更を申請してから、既に1年2カ月以上が経過している。政府与党関係者は「県が自ら定めた標準処理期間内に判断を示さないのは不誠実」と早期判断を求める。一方、6日の会見で、県の島袋善明土木建築部長は判断時期について「現在審査中」と明言を避けた。

 県が設計変更を不承認にした場合、国の対抗措置も焦点になる。防衛省幹部は県が判断する時期を見極める姿勢を示しつつも「いつまでも待っていられない」と語った。県が設計変更を不承認にした場合に、国と県が裁判闘争になることも踏まえ、「できることをやっていくしかない」と長期化も見据えている。

(明真南斗、塚崎昇平、知念征尚)