【深掘り】「オリンピックの道連れか」専門家も「寝耳に水」だった沖縄の緊急事態延長


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11日に「緊急事態宣言」を解除し「まん延防止等重点措置」への移行を政府に求めることを発表する玉城デニー知事=7日、県庁(高辻浩之撮影)

 新型コロナウイルス対策として、政府が沖縄の緊急事態宣言を8月22日まで延長する方針を固めたことで、まん延防止等重点措置への移行を求めていた玉城県政は早急な議論の立て直しを迫られることになった。県は感染状況の数値が厳しく、感染者数の下げ止まりも指摘される中で、重点措置への移行によって一時的な「息継ぎ期間」(県幹部)を設ける考えだったが、政府が県の要請をはねつける形となった。宣言延長が決まれば、沖縄の宣言期間は3カ月に及ぶ。

 玉城デニー知事が7日の感染症対策本部会議で重点措置への移行要請を決定し、国へ打診した直後に政府方針が報じられた。国から正式な連絡はなく、県の担当部局は7日、情報収集に追われた。

「東京の道連れ」

 県が重点措置の移行要請を決定した背景には、5日夜に開かれた専門家会議の意見があった。出席者からは「まん延防止等重点措置に移行後、流行したら迅速に宣言をかける」という意見が多数を占めたという。宣言に沿う形で、県は6日以降、感染拡大を判断する「指標」を設け、重点措置への移行を要請する準備を急ピッチで進めていた。

 一方、県関係者によると、国側から県の感染状況について「国の判断指標でいくと、レベル4の部分がいくつかあるので非常に厳しい」という反応があった。ある幹部は重点措置への移行要請について「感染症対策は県民の協力の下で進めないと実効性を持たない。専門家会議の意見や経済界の思いを受け止め、発信した」と説明した。

 ただ、昨年8月も県独自の緊急事態宣言が出されており、8月の観光最盛期が2年連続で需要を消失することになる。とりわけ、8月22日までという今回の期間の長さに、県内で驚きと落胆も広がる。別の幹部は「オリンピックの道連れにされたのか」と疑問を呈し「政府は地元の特別な事情を切り捨て、数字だけで判断したのではないか」と不満を口にした。

「官邸主導か」

 「寝耳に水だ」。厚生労働省に新型コロナ対策を助言する有識者会議「アドバイザリーボード」に出席した専門家の1人は、緊急事態宣言の延長に関する政府方針を聞き、驚きを隠さなかった。この専門家によると、7日の会議では「緊急事態宣言の延長」と「まん延防止等重点措置への移行」の二つの選択肢が示された。ただ、感染状況が改善しており、「延長してもこれ以上の劇的な改善が見込めない」という想定から延長を推す意見は出なかった。

 警戒レベルをいったん下げて状況によって引き締めを図る―という方針が出席者の意見の大勢を占めたという。専門家は「われわれの意見を踏まえてというよりは、官邸主導の判断ではないか」との見解を示した。
 (池田哲平)