9カ月間挙式ゼロ…資金枯渇で老舗結婚式場「サムシング・フォー西崎」が閉館


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6月末で営業を終了したサムシング・フォー西崎=9日、糸満市西崎町

 糸満市西崎町の結婚式場「サムシング・フォー西崎」が、6月末で閉館したことが分かった。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で結婚式の開催ができず、経営維持が難しくなった。1996年2月に糸満市唯一の結婚式場としてオープンし、結婚披露宴や地域のイベント会場として利用されてきた。支配人の男性は「思い出の場所を残すことができなくて申し訳ない思いだ」と話した。

 運営会社のナカダ(中田忍社長)は解散手続きを進めている。本島南部地域で数少ない専用結婚式場として、26年間で4300のカップルが挙式や結婚式で利用した。400人以上を収容できる大会場をはじめ三つのホールを備えていた。

 新型コロナの感染が拡大し始めた昨年3月ごろから結婚式の中止や延期が出始めた。感染状況が落ち着かないことや新郎新婦の負担を考慮して、式場側からも年明け以降に延期を呼び掛け、2020年は4~12月の結婚式の開催はゼロだった。キャンセル料もとっていなかった。

 今年1月以降に照準を合わせて予約も受け付け、準備を進めてきた。しかし、年末年始から新型コロナの第3波が猛威を振るい、予約は解除となった。1月だけで被害額は4千万円に上った。5月に県内で4度目の緊急事態宣言が発令されたことを受け、閉館を決めた。

 雇用調整助成金やセーフティーネット資金、金融機関からの元金猶予などで資金繰りを回してきた。支配人は「年明けから結婚式も開催予定だったので1年間頑張ってこられたが、資金もいよいよ枯渇してきて難しかった。ここで結婚式を挙げた人たちは景色も鮮明に覚えていると思う。地元のお客さんに支えられてきた」と振り返った。

 同式場で結婚式を開いた女性(33)は「スタッフの対応が良かった。なくなってしまって寂しい」と話した。 (中村優希、沖田有吾)