沖縄の日本への復帰から半世紀を迎えて、県が公表した新たな沖縄振興計画(振計)素案には「国への貢献」が強調された。国への貢献は、実は第3次振計(1992~2001年度)の段階で、「わが国の社会経済などの発展に寄与する地域としての整備」との文言が入っている。
かつて北海道と沖縄に開発庁があった。北海道は有用な資源を本土のためにどれだけ活用できるかが重要視されていた。沖縄は、遅れている地域をどれだけ本土にキャッチアップさせるかが課題だった。復帰から30年を経て、沖縄もさらに本土に貢献させようと「寄与」の文言が入った。今更のように新振計に本土への貢献を前面に出すこと自体、振興策欲しさでの政府への卑屈な「忖度(そんたく)」と受け止められかねない。
沖縄は、東西約千キロ、南北約400キロの広大な海域を経済水域として提供している。その上に、毎年1千万人前後の国内外の観光客を受け入れ、国民の保養地として十分に貢献している。日本の安全保障政策でも無理やり在日米軍専用施設の70%を押し付けられ、その上に宮古、八重山などにも新たに自衛隊基地の負担を強いられている。沖縄が果たしている「貢献度」を、常日頃から積極的に全国にアピールすべきだ。
沖縄振興を巡り、自民党議員から「単純延長は厳しい」(小渕優子氏)や、「国の政策に頼るなんて沖縄県民らしくない」(細田博之氏)などの発言があった。沖縄県が提供している「国益」に対する無理解と解決できない「普天間問題」への焦りからの発言であろう。
玉城デニー知事は日米安保を認め、在沖米軍基地の存続も容認している。「基地の負担が重すぎる」と言っているにすぎない。安保の負担にも寛容すぎる知事に対し「振興策はやらないぞ」とどう喝し、「政府に頼るな」と切り捨てる。上から目線の非礼な発言だ。
次期振計の策定に、政府のへ忖度はいらない。「脱政府依存」を目標に掲げ、「民間活力と外資で新たな沖縄振興に挑む」との決意を持ち、政府に対して「安保を沖縄に頼るな」と返せる骨太の交渉力を、県知事には発揮してほしい。
半世紀も翻弄(ほんろう)されてきた政府主導の沖縄振興策に別れを告げ、次代を担う沖縄の若者たちが誇りを持ち「自主自立の自己決定権」を行使できる「自力経済」を実現してほしい。
県は新振計の素案を6月に公表した。7月9日からパブリックコメント(意見公募)の募集が始まり、同月中旬から県振興審議会の各部会で素案についての議論が始まる。識者に素案の内容や沖縄振興の方向性について聞いた。