【深掘り】普天間のPFAS放出計画 米軍から処理方法の説明なく地元は懸念


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 在沖米海兵隊が米軍普天間飛行場内から、有機フッ素化合物(PFAS)を含む汚染水を処理した上で公共下水道へ放出する計画が挙がっている。防衛省は米軍の意向を踏まえ、放出に環境省や地元の理解を得たい考えだ。ただ、県や宜野湾市は米軍から処理方法などの説明がないこともあり、懸念を深めている。

タイミング

 米側がこのタイミングで下水への放出を打診した背景には、間もなく迎える台風シーズンへの警戒感がある。米軍は6月にうるま市の陸軍貯油施設で、大雨でPFOSを含む汚染水を流出させ、県民の反発を招いたばかり。防衛省幹部は「日本側に相談しており、悪意はない」と見る。

 処分方法の判断を急ぐ政府にとって環境法令や地元の懸念はクリアすべきハードルだ。松川正則宜野湾市長は9日、「焼却処分などしっかりとした処理をしてほしい」と処理方法に言及した。PFOSなどを含む汚水は廃棄物として焼却処分するのが一般的だ。ただ、膨大な量を処理するには時間と費用がネックとなる。

 海兵隊は米本国で使用している汚染水からPFAS成分を減らすシステムを使って濃度を下げ、放出する方針を示しているという。

 政府内では環境省の指針値を満たす水の放出に理解を示す高官がいる一方、本来焼却処分するPFASを、濃度を薄めて流していいのかとの懸念もくすぶる。廃棄物と位置付けられるのかも課題だ。

調整

 米軍は8日の報道発表で「(汚染水の)放出前に沖縄の当局とは調整する」と説明した。県には在沖米海兵隊から調整の意向は示されているが、日程などは決まっていないという。

 県関係者は「米軍の処理状況を確認しようにも、実際に流出事故が発生していないため環境補足協定に基づく基地立ち入りはできない」と難しさを語った。

 在日米軍の環境保全は、日本環境管理基準(JEGS)で日米の環境基準のうち、厳格なものを選択することを定めている。PFOSとPFOAでは日本側の指針が適用され、両物質の合計で1リットルあたり50ナノグラム以上の濃度の液体が流出した場合、通報義務が生じる。

 玉城デニー知事は9日の会見で、放出容認の是非には言及を避けた上で「JEGSなど環境基準との照合や、こうした状況が米軍で常態化する懸念なども確認が必要だ」とくぎを刺した。

 こうした汚染水の処理問題は今後、他の基地でも続くとみられ、防衛省幹部は今回の処理方法が「モデルケース」になると話す。

 台風の襲来で流出する事態の二の舞は避けたいのが本音で、「時間との闘い」と検討を急ぐ姿勢だ。

(知念征尚、塚崎昇平)


【関連ニュース】

排水路に高濃度の有害物質PFAS 指針の3.7倍、専門家「過去から汚染の可能性」