2021年度で期限が切れる沖縄振興計画(振計)の策定に向けて、自民党沖縄振興調査会の小渕優子会長は19日、県が求める振計素案に関する説明を省き、党本部への提言取りまとめに入る方針を示した。県は調査会へ素案の説明をした上で、党本部へ新しい振計制定の要請をするつもりだったが、はしごを外された。自民は露骨な「知事外し」で、玉城デニー知事の求心力低下を狙う意図が透けて見える。
出席求めず
自民党は政務調査会の下にある部会や小委員会、調査会が予算や政策を審議し、政府に提言する役割を担う。その影響力は強い。
党本部への提言取りまとめに向け、最終調整に入った19日の幹部会に、玉城知事を含め県側からの出席者の姿はなかった。
玉城知事は15日に上京して、河野太郎沖縄担当相らに県の素案を提出した。だが調査会への要請は「(先方の)日程が合わなかった」ために断念したと説明した。
もともと調査会は17日に来県して市町村から意見聴取する予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大もあり中止に。県選出議員の意向で3自治体の首長を招く一方、玉城知事は招かずに、意見聴取は県企画部長にとどまる予定だった。
玉城知事は「来るべきタイミングで要請をさせていただけるものと考えている」と調査会への出席に秋波を送った。だが小渕会長は5月に1度知事は出席しているとして「そんなことをやっていたら、みんな『追加で追加で』となる。ヒアリングが終わらない」と切り捨てた。
ただ、19日の幹部会には県連や経済団体の代表らが沖縄からオンラインで参加。それぞれ2度目の出席だった。
手柄争い
調査会は15年1月、振興予算を審議する会合に対立していた翁長雄志知事(当時)の出席を求めなかった過去もある。それまで例年知事が参加していたが、この時は県職員が傍聴した。
玉城知事を支える県政与党幹部は「衆院選や知事選を控える選挙イヤーの中で、知事の手柄にしたくないという、せこいやり方にしか見えない」とあきれた表情を見せた。「県民はコップの中の争いを見せられているようなもので、どちらの得にもならないのではないか」と指摘した。
過去の振計制定に携わった稲嶺恵一元知事は「県の意見を聞かないのは残念だが、国政与党と県の信頼関係がなくなったことが一番の問題だ。沖縄県も日本国の中の一つなので、意思疎通が図られるようにしてほしい。(調査会も)沖縄の将来の発展に向けて県民意見を勘案してほしい」と話した。
(梅田正覚、安里洋輔、大嶺雅俊)