23日の東京五輪開会式では、参加する国・地域の選手団を先導する「プラカードベアラー」という役割がある。大会オフィシャルスポンサーのコカ・コーラ社が募集し、国内各地から50人を選んだ。沖縄から参加する2人に五輪への思いを聞いた。
(仲村良太)
大学生の古川亮さん(22)=那覇市=は「落ち込んでいた私に勇気を与えてくれたオリンピックに恩返しをしたい」という一心で、プラカードベアラーとして開会式に臨む。
青森県三沢市で暮らしていた2011年3月11日、小学6年生で卒業式の練習中に東日本大震災を経験した。津波の被害は大きくなかったが、家中のものはバラバラになり、何日も停電した。地震翌日の12日は誕生日。「毎年楽しみにしていた誕生日がこんな日になるなんて」。電気が復旧し、テレビを付けると「津波の被害を受けた地域や原発が近くにあるという恐怖を感じた」と振り返る。中学からは母の地元の沖縄で学校に通ったが「震災の経験がトラウマ(心的外傷)になり両親にも苦労をかけた」という。
そんな時に背中を押してくれたのが五輪だった。
震災から1年が経過した12年の夏、ロンドン五輪が開かれた。ひたむきに競技に臨む選手たち。日本は過去最多となる38個のメダルを獲得した。「彼らは頑張っているのに。私は生きているのに。何をしているんだ」。そう思うと前を向き、あらゆることに挑戦するようになった。
三線を始めコンクールに挑んだ。スピーチコンテストや陸上の県大会で優勝した。留学も経験し、充実した10年を過ごせた。だからこそ、勇気をくれた五輪に「恩返し」をしたいという。両親に対しても「オリンピックの舞台に立ち、これまで育ててくれたことを恩返ししたい。一生に一度のこの機会が最適だと思う」と思いを込めた。