新跡地法を恒久法に 真喜屋美樹氏(沖縄持続的発展研究所長)<展望 新・沖縄振興>2


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真喜屋美樹氏

 現在、大規模返還が計画される「嘉手納基地以南」の米軍基地は、沖縄の人口の8割が集中し、都市機能と産業拠点が集積する。新たな振興計画素案でも示されているが、跡地は県全体の未来をつくる貴重な空間であり、沖縄が持続可能に発展できるかの鍵を握る。

 だが、跡地利用は時間がたつにつれて課題は増す。一つは軍用地料の問題だ。周辺地価に比べて高額な地料は、都市計画決定に関する合意形成に影響を及ぼす。地料の上昇は軍用地を投機商品にした作用もあり、返還までの時間が長期化するほど、利害関係者が増えて合意形成を難しくする。

 また、返還合意がされても、そのほとんどが「県内移設」が条件のため、返還時期は見通せず都市計画策定が難しい。先に一部分のみ返還される細切れ返還もあり、一体的な都市計画の実行が難しくなる。

 さらに返還前の土地の立ち入り調査は、実質的に米軍の「配慮」によって調査の可否が決まるため、跡地利用計画策定に支障をきたしている。日米地位協定の環境補足協定では、「返還前の約150日前を超えない範囲」での立ち入り調査が認められている。

 跡地利用推進法でも、国は、県や基地所在自治体からの立ち入り調査の申請に応じて、米側へ調査実施を「斡旋(あっせん)」することを義務とするが、実効性は担保されていない。土壌汚染などの調査には、少なくとも3~5年の期間が必要で、150日前では不十分だ。

 これまで中南部の広大な基地跡地にはおおむねショッピングモールが建設された。これは大型商業施設が必要だったというわけではなく、返還前の地代相当の利益を維持するために選択された再開発だった。行政にとっては再開発費を捻出するために商業地にせざるを得なかった事情もある。

 時限立法の跡地利用推進法の期限が2021年度で切れるが、全ての基地が撤去されるまでの恒久法として制定し直す必要がある。新法では、(1)公有地を確保する先行取得への財政支援(2)返還前の立ち入り事前調査の担保(3)返還後の再開発費用の財政支援(4)国有地部分の基地所在自治体への払い下げ―の四つの制度化が求められる。

 これまで軍用地主の不利益を軽減するための制度は整えられてきた。今後、跡地利用を推進するためには、財政基盤が弱い自治体を支援する制度が必要だろう。このままでは公共の福祉としてのまちづくりを行うのは困難で、跡地は従来通りの利益優先の再開発となってしまう。 (談)

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 県は2022年度からの新たな沖縄振興計画の策定へ向け、素案に対する意見聴取(パブリックコメント)を実施している。8月9日まで。素案は企画調整課ホームページや県庁(本庁舎)、宮古・八重山の行政情報コーナーで閲覧できる。問い合わせは同課(電話)098(866)2026。