東京五輪重量挙げ男子61キロ級に出場した沖縄県出身の糸数陽一選手(30)は、前回五輪と同じ4位入賞を果たしたものの念願のメダルにあと一歩届かなかった。テレビで観戦した家族や高校時代の恩師らは、結果を惜しみながらも東京五輪を目指して鍛錬してきた糸数選手の労をねぎらい、奮闘をたたえた。
【東京】「『頑張ったね』『お疲れさま』といつものように声をかけてあげたい」。糸数陽一選手の母、幸子(ゆきこ)さん(55)は25日、晴れ舞台を終えたわが子をねぎらった。
競技は、埼玉県朝霞市在住の長女、加奈子さん(28)の自宅で見守った。
糸数選手が重量挙げを始めたのは中学時代。強豪の豊見城高校に進んでからは、平日は先輩の自宅に寝泊まりし、週末に南城市の実家に戻る“二重生活”を続けた。母子で言葉を交わす機会は多くなかったが、幸子さんは、試合日の朝にはいつも愛情をこめたポーク卵おにぎりを握って送り出した。
加奈子さんは本番前日の24日、ラインで「自分を信じて。陽一らしくやれば大丈夫」と激励のメッセージを送った。「ありがとう。がんばるよ」。短い返信に緊張の色がにじんだ。
兄の背中を追って重量挙げの世界に入った加奈子さんは、高校、大学でも一緒に練習で汗を流し、「一番近くで見てきた」。実力も、メダルへの思いも知っているだけに「少し悔しい思いもある」。
次の五輪で今回果たせなかったメダル取りを目指すのか。競技を終えた糸数選手の思いは聞いていない。ただ、自身も競技者として目指す3年後への挑戦を決めたら「全力で頑張ってほしい」と後押しするつもりだ。