家族思いの糸数「メダルを見せてあげたかった」 沖縄からの声援が支えに


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男子61キロ級 ジャークで159キロに成功した糸数陽一=東京国際フォーラム

 バーベルを持ち上げる体を支えたのは、故郷の久高島への思いだった。重量挙げ男子61キロ級で2大会連続の4位になった糸数陽一(30)。沖縄からの声援に「最高のプレゼント。力になった」と感謝を口にした。

 母子家庭で、6人きょうだいの長男。母幸子さん(55)は「仕事が忙しい私の代わりに、陽一が下の子を見てくれた」。遊び相手は大自然だった。海に潜って岩を持ち上げ、ハイビスカスが彩る島を駆け回った。豊見城高から日本大に進み、今は警視庁で勤務しながら競技に取り組む。

 沖縄の家族を常に気に掛ける。苦しい家計を心配し、大学入学式はもらい物のジャケットで済ませた。初任給で、幸子さんに約30万円の中古車を買った。きょうだいへの誕生日プレゼントも欠かさない。競技後、故郷に向け「メダルを見せてあげたかった。(恩を)返すことができず悔やまれる」と語った。