「飛行機に乗れるよ」の一言で重量挙げの世界へ 日本のエースとなった糸数


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男子61キロ級 ジャークで162キロに挑む糸数陽一

 “神の島”と称される南城市の久高島出身。1991年5月24日生まれ。6人きょうだいの長男。幼少期は「漁の手伝いで網を引っ張ったり、海で泳いだりして体を動かすのが好きだった」。1周約8キロの島全体が遊び場で、屈強な体の礎が自然と築かれた。

 転機は久高中2年の時。所属していたバドミントン部の顧問、宮良三夫教諭が抜群の瞬発力と筋力を見抜き、沖縄重量挙げ界の名伯楽、大湾朝民さん(現県協会顧問)に紹介。島育ちの少年は「県外大会に出れば飛行機に乗れるよ」という言葉に引かれ、豊見城高ウエイトリフティング部への入部を決めた。

 最初は「毎日足をつってやめたかった」。それでも全国トップ級の先輩たちに食らい付くうちに才能が花開く。高校2年から2年連続で選抜、総体、国体の全国3冠を達成。日大、警視庁で常に国内トップを走り、2016年のリオ五輪62キロ級で4位入賞を達成。翌17年の世界選手権62キロ級では日本男子36年ぶりとなる銀を獲得し、名実ともに日本のエースとなった。

 性格は実直そのもの。男子ナショナルチームの小宮山哲雄監督は「練習に対する姿勢が素晴らしい。妥協をしない」と評する。160センチの小柄な体にぎっしりと詰まった筋肉が日々の鍛錬を物語る。重量挙げを始めて15年。「数字で強くなっているのが分かるのが面白いところ」と競技への愛情は少しも衰えていない。