世界自然遺産登録という歴史的な節目を喜びつつ、関係者らは「登録はスタート」と口をそろえた。世界の宝と認められたこの自然を、後世に受け継げるよう具体的に守っていくことが求められるからだ。
今回の登録で評価されたことの一つが外来種対策だ。肉食のほ乳類がいない環境で進化した沖縄島北部のヤンバルクイナや奄美大島のアマミノクロウサギは、外来種であるマングースやノネコに捕食されて激減した。ヤンバルクイナは2005年、「絶滅の恐れがある」と非常事態宣言まで出された。
徹底した対策で沖縄島北部、奄美大島ともマングースの捕獲頭数は激減し、奄美大島は22年度までの根絶を視野に入れる。これらの地域ではヤンバルクイナやアマミノクロウサギだけでなくカエル類などほかの小動物も増え始めており、世界的にも珍しい成功事例になりそうだという。
ただ、生物はわずかでも残っていれば繁殖してまた増える可能性がある。特にやんばるは、多数のマングースやノネコがいる中南部から再侵入する懸念が常にある。
対策を続けるには予算が必要で、ネコやイヌを捨てないなど県民の意識も不可欠だ。観光客増加に伴う交通事故や森の踏み荒らしは差し迫った課題だ。
沖縄島では世界自然遺産と同じ森が米軍の演習場として新たなヘリパッドが造られ、訓練が続けられる。返還地でも多数の銃弾や液体の入ったドラム缶などが米軍にも日本政府にも回収されず放置されたままだ。
登録後は観光管理計画や交通事故対策について、2022年12月1日までにユネスコに報告する必要がある。多様な問題はやんばる3村や西表島だけで対応できるものではなく、関係者は「広く県民に協力してほしい」と口をそろえる。
(黒田華)
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