沖縄・奄美の世界自然遺産登録を受け、玉城デニー知事や沖縄島北部(やんばる)、西表島の首長らは、生物多様性の価値が世界に認められたことを喜び、持続可能な地域づくりや環境保全への決意を新たにした。コロナ禍で落ち込む観光業界からは「沖縄観光復活のきっかけになる」と期待の声が相次いだ。一方、登録地は北部訓練場跡地を含む。米軍の廃棄物は今も見つかり、周辺では米軍機事故も起きてきた。世界遺産登録を機に、さまざまな課題の解決も問われている。
沖縄・奄美の世界自然遺産登録が決まったが、基地問題は解決されていない。2016年に部分返還された米軍北部訓練場の跡地も今回の登録地に含まれているが、返還後も米軍の廃棄物が見つかっている。17年に米軍の大型ヘリコプターが東村高江の民間地に不時着・炎上するなど、やんばるの森のそばには危険が横たわっている。
県が18年にまとめた資料によると、北部訓練場周辺で発生したヘリ事故は日本復帰以降、16件に上った。うち6件が墜落だった。県は「本島随一の森林地帯は、ヘリ墜落による火災発生の危険に常にさらされている」と指摘している。
訓練場の部分返還と引き替えに、日本政府がヘリ発着帯(ヘリパッド)6カ所を新設した。米軍のヘリや輸送機オスプレイが離着陸を繰り返す。19年にはヘリが誤って返還跡地に着陸した。
県内には、基地問題を残したままの世界遺産登録について、米軍施設の正当化に利用されるという警戒感もあった。だが、登録が近づくにつれ、矛盾を逆手に基地問題の解決を求めていく考えが目立ってきた。
県は今年5月、沖縄防衛局に対し、米軍関係廃棄物の処理や区域外に出て訓練をしないことなどを要請した。
県内の環境・基地関係39団体は今月18日、北部訓練場と返還地の問題を認識した上で日本政府や米軍に解決を促すよう、国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会や各国関係者に求める書簡を送っている。
(明真南斗)