【記者解説】沖縄振興の自民提言案のポイントは? 離島重視に透ける「安保と引き替え」の本音


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 来年で日本復帰50年という大きな節目を迎える沖縄の新たな振興計画について、自民党が提言案を示した。国のかじ取りを担う菅義偉首相は自民党総裁としての立場も兼務し、政府与党の提言は政府方針に強い影響力を持つ。提言案は「沖縄が我が国のフロントランナーとして飛躍的な発展を遂げるために」と未来志向を打ち出す。沖縄戦の記述がなく「もはや戦後ではない」というメッセージとも受け取れる。

 新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受ける経済に触れつつ、「県民所得の低迷」「子どもの貧困問題」と課題を挙げた。「課題の本質を見つめ直す」とあるように未曽有の災厄を奇貨に、50年で解決できなかった問題に向き合う姿勢を示したともいえる。

 ただ、離島振興が「我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中、沖縄の離島が果たす役割は従来以上に重要になっている」とする部分に本音が透ける。在日米軍基地や自衛隊基地が集中する現実に触れず、「防衛」という概念を包括する「安全保障」の役割に言及した。米国と緊張関係にある中国が念頭にあるのは、中国公船による領海侵犯が繰り返される「尖閣諸島」の文言を盛り込んだことからも明らかだ。

 これまでの取材で、出席議員から「沖縄への特別扱いは他の地域からの理解を得られない」という趣旨の発言が度々あった。「国民の理解と共感」を強調するのはそうした背景がある。

 政府与党は振興の代償にどのような責務を負わせようとしているのか。沖縄の犠牲と引き換えの振興策であってはならない。
 (安里洋輔)