1877年にフランス人が撮影し、現存が確認されている最古の首里城正殿や瑞泉門、崇元寺の写真について、これまで共有されてきた写真より解像度が高い画像データを、国の首里城再建技術検討委員を務める伊從(いより)勉さん(京都大学名誉教授)が写真所有者から入手し、29日に県立図書館や県公文書館へ寄贈した。両館は一般県民が閲覧できるように公開の調整を進める。
伊從さんは8月3日に沖縄総合事務局へも画像データを寄贈する。正殿や御庭などの細部の復元に役立つ貴重な資料として期待される。
伊從さんが30日、県庁記者クラブで記者会見を開き報告した。1877年の写真は、フランスの巡洋艦で那覇港に寄港した海軍少尉(後に中尉に昇進)のジュール・ルヴェルテガ(1850~1912)が撮影した。同巡洋艦のアンリ・リウニエ艦長のひ孫で、フランス海軍史研究家のエルヴェ・ベルナール氏が現在、写真を所有している。
昨年11月のシンポジウムで神奈川大学の後田多(しいただ)敦准教授が写真を紹介し、正殿の大龍柱が正面向きとなっていることも話題となった。首里城再建に向けた貴重な資料として国の「首里城復元に向けた技術検討委員会」でも検討が進む。
これまではフランス海軍博物館友の会が発行した雑誌に掲載された、論文にある写真などが共有されてきた。伊從さんは、より解像度が高い写真を入手するため、昨年11月から所有者のベルナール氏と交渉を続けてきた。今年5月には、ベルナール氏が所有する写真を接写した高画質のデータを入手し、使用権限も含めて日本の公的機関に移譲し寄贈するための交渉について伊從さんに委任された。
伊從さんは「琉球王国時代の首里城の写真が初めて所有権の制限なく、市民へ公開される。首里城の復元でもかなり重要な資料となる」と意義を語った。