辺野古市民訴訟 国側が資料提出を拒否 那覇地裁も求めず


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那覇地方裁判所(資料写真)

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、国土交通相が県による埋め立て承認撤回処分を取り消した裁決は違法だとして、周辺に暮らす市民が国に裁決の取り消しを求めた訴訟の口頭弁論が29日、那覇地裁(福渡裕貴裁判長)で開かれた。市民側は裁決までの過程などを明らかにするため、国が所有する全ての資料や記録を提出するよう申し立てたが、国側は拒否。福渡裁判長も提出を求めなかった。

 2018年8月、県が辺野古沖の埋め立て承認を撤回し、工事が一時中断。これに対し沖縄防衛局は国交相に審査請求を申し立て、国交相は19年4月に県の承認撤回を取り消す裁決をした。今回の訴訟で市民側は裁決が違法だとして取り消しを求めている。

 市民側は今月20日付で裁決に関する国の資料や記録を提出するよう、地裁に申し立てた。29日の口頭弁論で国側は「出す必要はない」と拒否。福渡裁判長も「裁判所として職権の発動はしない」と述べ、国側の対応を容認した。

 この日は、市民側が提出した書面の要旨陳述もあった。中村昌樹弁護士は、埋め立てが終わり、基地が完成すれば米軍の運用を規制する国内法はないと指摘し「将来、騒音などによる被害を受け得る住民らが、違法な騒音にさらされないために裁判で争うことができるのは、今ここしかない」と強調した。