名護市辺野古の新基地建設を巡り、県のサンゴ移植許可撤回への対抗措置として沖縄防衛局が申し入れた執行停止を、農相は認める公算だ。認められれば、移植作業が早期に再開する。県は執行停止などを不服として国を提訴する可能性も高い。法廷闘争になった場合、移植時期や撤回までの経緯など、県と防衛局の主張の対立が裁判でも争点になりそうだ。
岸信夫防衛相は2日の会見で、県が移植許可を撤回した「I地区」について許可期間が7月28日から2カ月だったとし「夏季に移植が制限されれば、I地区は全く許可されてないに等しい」と問題視。撤回に当たり、県が防衛局に聴聞を行わなかったことも「行政手続法に反する」と批判した。
一方、県は移植許可について「条件に不服があれば変更申請などをすべきだ」との立場だ。聴聞省略は「数日で作業が終わる可能性があった。緊急の取り消しでは聴聞省略も法的に認められている」と反論する。
執行停止では、防衛局が申し立てた審査請求の判断が出るまで、許可撤回の効力が一時停止する。これまでも防衛局は県の埋め立て承認取り消し(2015年)と埋め立て承認撤回(18年)で、国土交通相に執行停止を申し立て、いずれも2週間程度で認められた。今回も農相は執行停止を認める公算が大きく、今後、数週間程度で移植作業が再開する可能性がある。
県はサンゴ移植に適さない夏季に、防衛局が作業に着手したことなどを執行停止などの審査で主張するとみられる。執行停止などが認められた場合、県は農相の判断の妥当性を問い、訴訟に移る見通しだ。