対馬丸の撃沈を紙芝居に 奄美住民の体験も取り入れ 記念館制作


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 1944年の対馬丸撃沈を子どもたちに語り継ごうと、対馬丸記念館は2019年から2年をかけて、学習教材用の紙芝居を制作した。小学校低学年と高学年向けの2種類。高学年向けは、生存者の救出や遺体の埋葬にあたった奄美・宇検村の住民の視点を初めて取り入れた。対馬丸記念館は「犠牲者や遺族、生存者や助けた側にもさまざまな苦しみがあったことを知ってほしい」としている。

紙芝居を手にする対馬丸記念会の外間邦子常務理事(中央)と学芸員の堀切香鈴さん (右)、外間功一さん=2日、那覇市の対馬丸記念館

 対馬丸記念館は19年、子どもたちが犠牲になった事実をより身近に感じてもらう手法を探ろうと、那覇市内の小学校教諭らにアンケートを実施した。回答の中で最も要望の多かった紙芝居を新たな教材にすると決めた。

 低学年向けは「2つのランドセル 海に沈んだ対馬丸」。記念館に展示されている遺品のランドセルの持ち主で、当時泊国民学校5年生だった外間美津子さんと3年生の悦子さん姉妹の話が基になっている。

 高学年向けは「対馬丸へのいのり~宇検村 対馬丸いれいひをたずねて~」。多くの遺体が流れ着いた宇検村で、住民が遺体を丁寧に埋葬し、悲劇を語り継いでいくために慰霊碑を建てた話などを盛り込んだ。

紙芝居「対馬丸へのいのり」=2日、那覇市の対馬丸記念館

 美津子さんと悦子さんの妹で、館を運営する記念会の外間邦子常務理事は「紙芝居では、ランドセルが現代の子どもたちに『夢や希望を教えて』と語り掛ける場面がある。託されたメッセージを受け取って、みんなで一緒に平和を築いていくと思ってもらえたらいい」と願った。

 高学年向けについて、枝川健治事務局長は「沖縄の目線で伝えた教材が多い中で、宇検村側の貴重な記録を残せた。埋葬のつらさやかん口令など、助けた側にもつらさや苦しみがあったことを知ってもらいたい」と語った。

 低学年向け、高学年向けの紙芝居は、いずれも16枚組で5セットずつ制作。今月から市内外の希望する小学校などに貸し出す。DVDも本年度中に制作する予定。貸し出しに関する問い合わせは対馬丸記念館(電話)098(941)3515。

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 対馬丸記念会は18日、那覇市若狭の旭ケ丘公園にある小桜の塔で慰霊祭を開く。慰霊祭は撃沈された8月22日に例年実施されるが、今年は旧盆に重なるため繰り上げる。新型コロナウイルスの感染対策の一環として、一般参加を中止し、関係者のみで規模を縮小して実施する。