レスリング屋比久「悔しさでいっぱい」世界王者に惜敗 3位決定戦へ<東京五輪>


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男子グレコローマン77キロ級2回戦 ハンガリーのレーリンツ(左)と対戦する屋比久翔平=幕張メッセ

 2点を追う展開。相手は2019年世界選手権覇者で優勝候補筆頭のレーリンツ(ハンガリー)。2回戦、残り15秒だった。押し合いで相手をいなし、つんのめった瞬間に屋比久が背後を取った。逆転の好機。「思い切っていけ!」。マット横のコーチからげきが飛ぶ。

 膝をついて向き直った相手に正面から追いかぶさるように両腕でつかみに行く。しかし、すり抜けられて万事休す。全身の力が抜け、一瞬棒立ちになった。そのまま終了ブザーが響き敗退。1回戦は不戦勝で、これが初戦だった相手は膝に手をつき、苦しそうに顔をゆがめた。「最後に相手が崩れ落ちて、ポイントを取るとこまでつなげられなかった」。身上の「前に出るレスリング」で体力を削ったが、あと一歩のところで大金星を逃した。

 直後にテレビインタビューで心境を問われ、荒い息遣いのまま、頭を整理するように15秒ほど沈黙した。絞り出したのは「悔しさでいっぱいです」との一言。序盤から組手争いで腕を取られて受ける展開となり、パッシブ(消極的な姿勢)とローリングで3点を先行された。「前半に相手の時間が多くなってしまった」と悔やんだ。

 レーリンツが決勝に進出したため、3日の3位決定戦に進む。県勢レスラーとして初めて五輪のマットに立ち、1回戦では残り約40秒でがぶり返しを決めて逆転勝利した。県勢初の白星という新たな歴史も刻んだ。銅メダルをつかめば、県出身選手としては全競技を通じて個人種目初のメダルとなる。沖縄レスリング界のパイオニアは「しっかり反省しつつ、全力で取り組みたい」と快挙に挑む。