<書評>『村の散歩道』 村を愛し 息吹伝える


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『村の散歩道』大城和喜著

 大城和喜さんの4冊目となる新刊『村の散歩道』が届いた。今回の本は特に内容が膨大で、素晴らしい。この本を夢中になって読ませていただいているので、初発の印象を述べたい。

 まずは、著者が南風原町喜屋武に生まれたことに感謝し、こよなく愛し、村の出来事を知り尽くしておられることに感動しました。村の歴史や風土、哲学、人々の心情をよく把握していることにも驚いています。村人の個性や生い立ちなど、詳細に記憶されていることは、ただ事ではありません。それだけ村を愛し、村の生活に密接に関わったからでしょう。村の一日、月の行事、一年の行事、それぞれの関わり方で、一部始終記憶にあるとは、ただ不思議で目が丸くなるばかりです。読み進めるうちに、村人たちの息吹が感じられ、すべてを見逃すことなく緻密に表現されています。ほかにこのような著書はないでしょう。

 それに有名な文学者や詩人のことばの引用など、日々生きていくための心構えや、村の成り立ち、多読家でなければ出てこないことばの数々、著者の知恵が満載で、不思議な気がするほどです。天才的頭脳のめぐりの良さと言いましょうか、それとも喜屋武村の大統領的人物と申しましょうか、ただただ驚かされるばかりでした。なるほどと感動あり、ユーモアあり、爆笑あり、悲しみあり、不思議あり、納得あり、私の能力では意味不明もあり、感慨深く読み進めました。

 それにウチナー口と日本語に、それぞれ意味が分かるように振り仮名が付けられ、昔懐かしい言葉が多数記録されていますので、忘れかけていた言葉を思い出し、うれしくて、楽しみました。

 よい本を読ませていただき、いっぺーにふぇーでーびたん。文面から勇気と生きる力をもらっています。これで人生のまとめのような結語(うっぴ)が書かれていましたが、今後の村のことも書き残さなければなりませんよ。次の著書を期待しています。

 (平良啓子・対馬丸体験語り部)


 おおしろ・かずき 1949年南風原町生まれ。琉球大卒。元南風原文化センター館長。インパール平和資料館建設委員。本書の問い合わせは南風原文化センター(電話)098(889)7399。