日本兵に迫られ、妹置き去りに 大嶺管さん 捕らわれた日(3)<読者と刻む沖縄戦>


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糸満市喜屋武公園の近くに残る屋敷跡のヒンプン

 大嶺管(すが)さん(90)=糸満市=は4歳の妹、フサ子さんを背負い、米軍が迫る豊見城村(現豊見城市)の翁長集落から現在の糸満市方面へ逃れます。他の翁長住民も一緒です。

 「白銀堂の近くにある報得川の橋が壊されていました。妹を負んぶして川を渡るのは大変でした」と大嶺さんは語ります。

 大嶺さんらは喜屋武にたどり着き、壕に避難します。そこで悲しい出来事が起きます。フサ子さんが泣きやまないため、日本兵が壕の外に出すよう迫りました。一緒にいた住民も妹を壕から出すよう促したといいます。

 「だっこしていた妹が泣くので、日本兵が『小さな子が泣いていると敵に見つかってしまう。外に捨ててきなさい』と言うんです。日本兵は太刀を持っていました」

 日本兵や住民から迫られ、追い込まれた大嶺さんは壕の外に出て、フサ子さんを広場に置き去りにしました。フサ子さんとはそれっきりです。

 「私は14歳、妹は4歳でした。あの時の気持ちは、もう何とも言えない。一緒に連れていくことができたらと思うが、今となってはどうにもなりません」

 日本兵に命じられ、妹を戦場で手放した76年前の出来事は、今も大嶺さんの心に深く刻まれています。

 「周囲の人が『小林』と呼んでいた、あの時の日本兵が憎い。私が生きている間、忘れることはできません」